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Power Virtual Serverの料金体系を紐解く ~オンプレミスとクラウドで異なる見積もり時の注意点 |IBM iの新常識 ❶

IBM Cloudの料金体系

IBM Cloudには、主に2種類の料金プランがある。1つは従量課金。IBM Cloudの各サービスを利用した分だけ課金されるモデルで、クレジットカードの登録が必須となる。もう1つはサブスクリプションで、毎月定額が課金されるモデルである。

企業ユーザーの場合はサブスクリプション契約となるため、ここではサブスクリプションの課金モデルについて説明する。

IBM Cloudの料金設定のベースとなる通貨はUSドルであるが、日本でサブスクリプション契約により取得したIBM Cloudのアカウントの料金設定のベースは日本円となる。したがって、IBM Cloudコンソールにログインした際、カタログの各サービスの料金は円で表示される。

IBM Cloudのサービスの定価はUSドルで設定されているので、日本円での請求の場合、為替レートの変動の影響を受ける。それにより、同じサービスであっても、その定価は毎月変動することになる。

適用される為替レートについて、以前は一定期間固定され、適宜見直しがされてきたが、2023年2月1日より、毎月変動する運用に変更された。毎月請求時に適用される為替レートは、月末に設定された主要な金融機関のベンチマークレートを使用したレートであり、翌月1日からの消費に適用される。

次に、サブスクリプションの消費の仕組みについて説明する(図表1)。

図表1 サブスクリプションの消費の仕組み

サブスクリプションというと、動画配信サービスなどでも適用されている料金モデルなので馴染みがあると思われるが、IBM Cloudのサブスクリプションはそれとは少し異なる。

IBM Cloudでは毎月、最低金額と最短契約期間が定められている。毎月5万2500円で期間は6カ月から契約が可能である。最適金額×最短期間で契約した場合、ユーザーはデパート商品券のように31万5000円分の使用権を事前購入することになる。つまり、サブスクリプション(使用権)は月の契約額×契約月数で決まる。事前購入ではあるが、支払い方法は毎月払い、四半期払い、年次払い、一括前払いより選択可能である。

契約期間内であれば、いつ、いくら使うかはユーザー次第であり、毎月定額を消費する必要はない。使用権が残っている間は、その月の消費量と請求金額は連動せず、消費量にかかわらず定額が請求される。使用権をすべて使い切ってもサービスは継続提供され、定額分に加えて超過分が請求される。

契約期間終了後、サブクスリプション契約を更新せずに利用を続けた場合、使った分だけ毎月請求される従量課金契約に自動的に切り替わり、請求書が発行される。また、契約期間内に使いきれなかった使用権は抹消され、繰り越せない。サブスクリプション契約を更新した場合でも、次の契約期間に繰り越せない点に注意する必要がある。

これらをまとめると、以下のようになる。

途中解約:不可
契約更新:自動更新(オプションで満了時に終了も可能)
更新料金:初回契約時の料金を維持
月契約額:5万2500円〜 (100円単位で増額)
契約期間:6カ月契約〜 (1カ月単位で拡張)
適用為替レート:月末に設定された主要な金融機関のベンチマークレートを使用したレートが翌月1日より適用
対象サービス:IBM製PaaS/IaaSサービス(他社製は個別確認のこと)
支払い方法:毎月払い、四半期払い、年次払い、一括前払いより選択可能

Power Virtual Serverの料金体系

IBM Power Virtual Server(以下、Power Virtual Server)の料金は、時間単位の従量課金である。IBM Cloudのサブスクリプション契約には、最低契約金額と最短契約期間が定められているが、Power Virtual Serverの利用自体にそのような制限はなく、1時間単位での利用が可能である。

Power Virtual Serverの単価は、選択したデータセンター、コンピュート/ストレージ、ソフトウェア・ライセンス、およびSAP認定Virtual Serverの利用の有無によって異なる。

詳細はコスト見積もりツール(https://cloud.ibm.com/power/overview#estimator)で確認できる。

あらかじめ長期間利用することが決まっている場合、リザーブド・インスタンスの購入が推奨される。1年間もしくは3年間の利用を確約することで、大幅な値引きを受けられる。ただし途中解約はできない点に注意が必要である。

クラウドとオンプレミスの違い
見積もり時の注意点

クラウドを利用するということは、ユーザーのいる拠点からクラウド上にあるサーバーへ接続するために、ネットワーク・サービスの利用が必須となる。したがって、Power Virtual Server本体の料金のみでなく、ネットワーク・サービスに要する費用と接続を実行する周辺機器の費用も見積もりに入れる必要がある。

本稿では、インターネット経由での接続(Internet VPN)とクラウド接続サービスからの閉域ネットワーク接続(Direct Link)の2つのネットワーク経路のケースを挙げる。

必ずしもこの2つの経路が必須ではないが、ネットワーク接続形態はいろいろと考えられるため、典型的な接続ケースでの概算を確認する目的で、この2つを使って説明する。ただし、アクセス・ユーザー数や必要帯域によってネットワーク・コンポーネントのリソース・キャパシティが変わるため、ここでの記載はあくまで検討初期段階の参考情報にしてほしい。

またPower Virtual Serverでは、物理テープを使用できない。今回は一次バックアップ用途として、Power Virtual Serverインスタンス内にいったんバックアップを取得し、その後の二次バックアップ先として、実行容量 6TB (上記3インスタンスの一次バックアップ容量、合算値と同容量)のオブジェクト・ストレージ(ICOS)を想定した(図表2図表3図表4図表5)。

図表2 今までのBoxリプレース提案との違い
図表3 提案構成の全体イメージ
図表4 IBM Cloud の見積もり項目
図表5 参考費用(月額料金)

Power Virtual Serverを
利用するメリット

参考までに、Power Virtual Serverを利用するメリットを以下に9つ挙げる。

❶ビジネス環境の変化に機敏に対応できる

0.25コアから利用を開始でき、必要に応じて拡張も可能である。リソースの割り当て変更は管理ポータル画面からセルフサービスで行える。これにより、ピーク時に必要となる容量をあらかじめ購入する必要がなくなる。つまり必要な時だけ、必要な容量を確保できるので、コストを抑えられる。

❷クラウド移行時のリスクを軽減できる

Power Virtual Serverのエンタープライズ・スタックは、認定済みオンプレミス・スタックと同一であり、ファイバー接続ストレージ付きサーバーのスケールアップとスケールアウトが可能である。これにより、リファクタリングやアーキテクチャを再構築することなく、既存のワークロードをクラウドに移行できる。また、既存のソフトウェア・ライセンスを持ち込むことも可能である。

❸可用性と費用対効果の高いレジリエンスを担保できる

Power Virtual Serverが稼働するデータセンターは、電源やネットワークが独立し、地理的に分散した複数のリージョンから選択できる。日本では東京リージョンと大阪リージョンで提供されており、災害対策に必要な冗長性と地理的分散による高い可用性を国内で担保できる。さらに共有プロセッサ・プールを使用することで、DRサイトのコンピュート・コアを確保するためのコストを最適化できる。

❹料金体系が柔軟である

使った分だけ課金される従量課金である。これにより、CAPEX(Capital Expenditure)からOPEX(Operating Expenditure)へシフトできる。

❺インフラ運用のスキルをそれほど要求されない

Power Virtual Server側でPowerサーバー、ストレージ、ネットワークのマネージド・サービスを提供する。これにより人材育成をIT運用ではなく、ビジネス優先度の高いスキル・エリアにフォーカスできる。

❻24時間体制のサポートを受けられる

ケースを通じたサポートを24時間365日受けられる。また、IBM Cloudの有償サポート・サービスを契約することで、サポートケースに重要度を設定でき、その重要度に応じた目標応答時間内に回答を得ることが可能となる。

❼モダナイゼーションできる

マネージドOpenShiftやVMwareなど、170以上のIBM Cloudのサービスとシームレスに接続できる。クラウドネイティブとプラットフォームサービスへシームレスにアクセスすることで、さまざまな異なる環境にあるアプリケーションのモダナイゼーションを可能にする。

❽クラウド標準のコンプライアンスとセキュリティを尊守

Power Virtual Serverは、SOC1 Type 1とType 2、PCI-DSS、ISO 27000などクラウド標準のコンプライアンスとセキュリティを遵守している。

❾コストを抑えられる

効率性が改善された新しい世代のサーバーを使用することで、コア数を減らし、ソフトウェア・ライセンスコストを削減できる。また共有プロセッサ・プールを利用することで、キャパシティを確保するコストも削減できる。

既存のIBM iのライセンスを活用したり、安価なIBM Cloud Object Storageにバックアップすることで、さらなる費用の削減が可能となる。

IBM i OSの料金体系

Power Virtual Serverで日本に展開されているハードウェアは、Power9モデル E980とS922である。オンプレミスと同じスタックで、ロジカル・パーティションとして利用する。

Power9モデルで稼働可能なOSのバージョンとリリースが、Power Virtual Serverで稼働する。

Power9のモデルではIBM i 7.5が2022年5月に発表となり、Power Virtual Serverでは翌月の6月から利用できるようになった。現在の利用可能OSは図表6となる。

図表6 Power Virtual ServerのサポートOSとバージョン

標準サポート期間のIBM iのバージョン・リリースだけでなく、IBM i 7.1、IBM 7.2は特別延長保守の価格で利用可能となっている。前提となるプログラム一時修正(PTF)レベルがあるので、利用の際は最新情報を確認してほしい(https://cloud.ibm.com/docs/power-iaas?topic=power-iaas-minimum-levels)。

利用料金は、標準サポート価格と特別延長保守価格で提供されている。Power Virtual ServerでIBM i 7.3を利用している場合、サポート期間内は標準価格での利用となる。サポートが終了したあとも、そのまま利用し続けることは可能だが、利用価格が上がることに注意が必要である。

IBM iソフトウェアの料金体系

Power Virtual ServerはIBM iのOS、およびすべてのオプションフィーチャーとライセンス・プログラムが提供される。選択できるライセンス・プログラムは、以下の4つである(図表7)。

・IBM Cloud Storage Solution for i
・Power HA for i
・Rational Development Studio for i (ユーザー数課金)
・Db2 Web Query for i

図表7 Power Virtual Serverで提供されるIBM iのライセンス・プログラム

Power Virtual Serverのインスタンスには、OSもライセンス・プログラム料金も含まれる。価格の変動要素としては、データセンターの場所、構成するハードウェアモデル、利用するOSのバージョン・リリース、コア数が挙げられる。

オンプレミスでのライセンスをPower Virtual Serverに移転することも可能である。またモバイルライセンスの仕組みもある。

オンプレミスで利用するユーザーがPower Virtual Serverへ移行する場合、オンプレミスのIBM i 使用許諾を Power Virtual Serverに移転することで、標準より安価にPower Virtual Serverを利用することも可能となる。これは、P10モデル以上のIBM i使用許諾および有効なSWMA を持つ場合に適用できる。

著者
野々市谷 有里氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部 テクニカル・セールス
クラウド・プラットフォーム 
第二テクニカル・セールス 部長

プロジェクト・マネージャーを10年以上経験した後、2015年よりIBM Cloudのオファリング・マネージャー、2022年よりSME(Subject Matter Expert)と呼ばれるIBM Cloudの専門家とオファリング・マネージャーの所属する部を担当。日本市場にIBM Cloudの特徴をわかりやすく伝える活動のほか、女性技術者同士を繋げるコミュニティ活動の運営にも携わっている。

著者
玉川 雄一氏

日本アイ・ビー・エム株式会社
テクノロジー事業本部
Advisory Cloud Platform
Technical Specialist


日本IBMで10年以上、主にIBM Powerの利用ユーザー向けに基盤設計・構築・運用やプロジェクト管理を経験したのち、2014年からIBM Cloudのテクニカル・セールスとして活動。オンプレミスとクラウド双方の知見を活かし、ユーザーの課題解決に向け、多数の提案活動に携わるほか、技術記事の執筆や講演活動も行っている。

[i Magazine 2023 Spring(2023年5月)掲載]

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