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ユーザーのスキルレベルに応じて開発スタイルを選択できる ~Valence流のローコード開発

一般的なローコード開発ツールには
共通の特徴がある

ミガロ.の「Valence」は、基幹システムを利用するWebアプリケーションを3ステップで開発できるローコード開発ツールである。3ステップとは、「データソースの作成」→「ウィジェットの設定」→「アプリケーションの作成」という3つの作業フェーズで、その作業をウィザードに従いながら進めることができる。

しかし、3ステップで済むからValenceはローコード開発ツールである、と言われても読者の多くは釈然としないに違いない(実際は、同社はそのような主張はしていない)。

3ステップによる開発はValenceの大きな特徴の1つだが、それだけではなく、そのほかの特徴と相まって、ローコード開発が理想とする「すばやい開発」「エンドユーザーによる利用」「メンテナンス性と拡張性」を実現するからこそローコード開発ツールである、というのが同社の主張である。本稿では、Valenceのローコード開発ツールたるゆえんを見ていこう。

同社の尾崎浩司氏(RAD事業部技術支援課 課長)は最近、IBM i市場で提供されている複数のローコード開発ツールを調べてみて、いくつか気づきがあったという。

「ローコード開発ツールと一口で言っても定義は各社まちまちですが、1つ共通して言えるのは、ツール固有の開発環境を最初に整え、そこでシステム部門がプログラムを開発し、それをエンドユーザーが利用するというスタイルがほとんどということです。また独自の言語コードを吐き出すツールが多いのも目についた点で、そうなると保守は技術に詳しいシステム部員が担当するしかなく、誰でも長く使えるということにはなりません。開発環境の習熟や独自言語によるメンテナンスが必要になるなど、ツールとしての敷居の高さを感じました」

一方、Valenceについては、「開発ツールとしての敷居の低さとエンドユーザーでも使いこなせる直観的な操作性、そしてあくまでもIBM iをターゲットにしている点が特徴であると、あらためて認識しました」と、尾崎氏は語る。

Valenceは特別な開発環境を必要とせず、Webブラウザがあれば利用できる。ライセンスも開発者向けやユーザー数カウントなどの区別はなく1種類で、誰でも導入後すぐに3ステップでアプリケーションを作成し公開が可能である。権限設定など開発者用の機能もあるが、Webブラウザだけで開発を行える点が尾崎氏の言う「敷居の低さ」だ。

またIBM iがターゲットという点について尾崎氏は、「他社のローコード開発ツールはベースがオープン系開発ツールで、複数ある接続先の1つがIBM iという仕様が多数です。そのためにJavaなどRPG以外の言語スキルを必要としますが、Valenceはたとえばツールの設定だけでは実現できない処理があった場合でも、RPGだけでロジックの追加が行えます。ValenceはIBM iと融合したツールで、この点でIBM i技術者にとって敷居が低いツールと言えると思います」と説明する。

異なる種類のプログラムを
混在させて開発できる

さらに、その融合に関して「実は非常に大きな特徴」と、次のように付け加える。

「ValenceにはFusion 5250と呼ぶWeb5250エミュレータが付属しており、既存の5250アプリをそのままValence上で実行可能です。つまり、AppBuilderで作成したWebアプリと既存の5250アプリとを同じValence上で起動し、シームレスに業務を行えます。ローコード開発といえどもすべての機能を1から置き換えるのは、通常多くの工数や時間がかかります。しかしValenceを使用すれば、5250アプリで課題となりやすい、表示される情報量の制約がある環境から徐々にAppBuilderに置き換えていけるので、開発効率という点で非常に大きなメリットになると考えています」

直感的な操作性については、ウィザードによる開発やGUI画面から必要なものを選択するという方法なので、「エンドユーザーでも使いこなせる」とするのに異論はないだろう。

Valenceは昨年12月にリリースされたバージョン6.0(Valence 6.0)で、アプリ開発機能AppBuilderに、開発ステップごとにユーザーの権限を細かく設定できる機能を追加した。データソース、ウィジェット、アプリケーションの各作成ステップごとに編集権限のある・なしを定義できる機能である。

尾崎氏はこの機能によって、「エンドユーザーのスキルレベルに合わせた、バラエティに富んだアプリケーション開発が可能になりました」と指摘する。

「6.0より前のバージョンでは、システム担当者だけがAppBuilderを使うことができ、開発したアプリケーションをポータル(Valence Portal)上に公開し、それをエンドユーザーが利用するという使い方でした。つまりシステム担当者向けのローコード開発ツールだったわけです。6.0では、システム担当者がデータソースを作成し、ウィジェットとアプリケーションの作成権限を付与されたエンドユーザーが、提供されたデータソースを元に独自のアプリケーション開発を行うといった、スキルに合わせた多様な開発スタイルが可能になっています」(図表

Valenceにおけるエンドユーザーのスキルレベルに応じた活用パターン
図表 Valenceにおけるエンドユーザーのスキルレベルに応じた活用パターン

半年に1回リリースアップする
進化するツール

ミガロ.では、ValenceのほかにDelphi/400、SP4iという2つの開発ツールをラインナップしている。Delphi/
400は、IBM i用アプリケーションのほかに、IBM iと連携するWindows、MacOS、iOS、Android用のネイティブアプリを開発できるツール。SP4iは、RPGまたはCOBOLのスキルのみでIBM i対応のWebアプリケーションやスマートデバイス用アプリを開発できるツールである。簡単に言えば、Delphi/400はどのようなアプリケーションも開発可能なツールで、SP4iはWebスキルをもたないIBM i技術者用のWebアプリケーション開発ツールである。Valenceはこれらのラインナップのなかで、IBM i用の小規模なWebアプリケーションをすばやく開発するためのツール、という位置づけなのだろうか。

代表取締役社長の上甲將隆氏は、「機能を見ると、Valenceは本格的なWebアプリケーションを開発・保守できる機能を十分に備えているので、その見方はあたりません。お客様がよりシンプルかつスピーディな開発を求められ、エンドユーザーによる開発も可能にしたいという場合はValenceが最もフィットしています」と言い、さらに「Valenceは半年に1回のペースでリリースアップを続けている“進化するツール”です。お客様から日々寄せられるご要望に対応し、6月に登場したリリースアップでは140を超える機能の追加・改善を行いました。世の中全般でエンドユーザーによる開発が重要視されつつあるなかで、その敷居の低さ、アジャイル性から、Valenceはより広範に使われていくと考えています」と述べる。

ミガロ.「Valence」

[i Magazine 2021 Summer(2021年7月)掲載]

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