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Watson Discoveryを核に、使い勝手や運用性を高めて社内文書を検索  ~Arrow Search(注目製品)

 

 

 

Watson Discoveryの
使い勝手を高めるテンプレート 

 シーアイエス(以下、CIS)は2018年春、企業内情報AI検索サービス「Arrow Search」をリリースした。これは「IBM Watson Discovery Service」(以下、Discovery)を核に、CISが独自開発した専用テンプレートを組み合わせたAI検索システムである。同社にとっては、今後力を入れていくAIソリューションの第1弾となる。

 Arrow SearchはファイルサーバーやRDBをはじめ、技術情報管理システムや部品表システム、ノーツ/ドミノのDB、boxといったクラウドストレージなど、社内に存在する多種多様な文書データを横断的に検索するSaaS型のクラウドサービスである。

 特徴は、普段の会話に登場する話し言葉(自然言語)で検索用キーワードを入力できること(スマートデバイスなどを用いれば、音声による入力も可能)。検索結果は関連性の高い順(ランキング順)に一覧表示され、そのリンク先をクリックすれば元ファイルを呼び出せる。

 システム概要は、図表1のとおりである。IBM Cloud上にあるDiscoveryと、Microsoft Azure上にあるArrow SearchをAPIで接続し、ユーザーはブラウザを使ってアクセスする。社内の文書情報をテキストファイル形式で、Arrow Search内の専用文書インデックスにアップロードし、ユーザーが入力したキーワードを使って、Discoveryで検索する仕組みである。

 

 

 Discoveryは文書取り込み機能、エンリッチ機能、クエリー機能などを備えるが、これらは一般にAPI経由で操作する。ユーザーが独力でDiscoveryにより検索システムを構築する場合、Pythonなどの言語を使ってAPIを連携させるなど、さまざまな開発作業が発生する。

 しかしArrow Searchでは、CISが独自に開発したテンプレートにより、API連携をはじめ、回答データ管理(回答データの登録・履歴管理)、トレーニングデータ管理(サービスのステータス管理、学習データの登録・反映・履歴確認・過去分ダウンロード)、フィードバック管理(評価情報の確認・ダウンロード)、ユーザーメンテナンス、マスタメンテナンスなどの機能がサポートされている。

 これによりユーザーはシンプルで直感的なGUI画面を使いながら、APIを意識することなく、文書登録やトレーニングデータ登録を実行したり、検索と同時に評価をフィードバックできる。導入や運用時の工数を大幅に削減し、「負担の少ない運用」が可能になるわけだ。

 図表2は、Arrow Search活用までの作業ステップである。

 

 

 ソリューションサービス営業部の桜井勝博部長は、次のように指摘する。

「検索対象となるファイルの保存場所を明確にすること、想定問答(頻度が高いと予想される質問と回答)を学習データとして最低49問用意すること、そして外部にアクセスするための安全なネットワーク(VPN)を準備すること。Arrow Searchでは、この3つをご用意いただければ、最初の試行レベルまで約2カ月程度で構築が可能です。通常の検索システム構築時に求められる属性登録やタグ登録なども不要で、その後のトレーニングで検索精度を継続的に向上していけます」

 

あるユーザーの技術部門で
検索時間を大幅に削減

 Arrow Searchはもともと、CISがある製造系ユーザーと共同で開発したAI検索システムがベースである。このユーザーの技術部門では、大量のエンジニアリング系ドキュメントが蓄積されていたが、保管場所が散在しているのに加え、専門性の高さから検索が難しいという課題があった。

 そこで経験の少ない社員でも的確に必要ドキュメントを検索したいというニーズに応えるべく、CISがDiscoveryを核に、使い勝手を高めるテンプレートを開発した。これが、Arrow Searchとしてサービス化されたのである。

 ちなみにこのユーザーでは、10~30分を要していた検索時間が、体感レベルで1~5分程度にまで短縮され、検索精度も大幅に向上したという。

 現在、営業部門での資料やカタログ、技術部門でのエンジニアリング情報、総務部門での規定書類、そしてチャットボットを連携したヘルプデスクやQ&A集、問い合わせ対応など、Arrow Searchにはさまざまな活用シーンが想定されている。

「いきなりAI検索という言葉を使うと、AIに対する過度の期待や、逆にAIへのアレルギーを抱かれるお客様もおられるので、最初はAIという言葉を出さず、文書検索の機能性やArrow Searchならではの検索精度の高さ、使いやすさのご説明から始めています。また現場部門の方々から、経営層にAIの必要性を理解してもらうのが難しいとの悩みをお聞きするので、経営層への効果的なアプローチを意識して展開しています」と、Arrow Searchを担当する出見世有紀氏(ソリューションサービス営業部 ソリューションスペシャリスト)は語る。

 Arrow Searchの利用料金は、スタートパックが90万円(クラウド初期設定、初回データ登録支援、操作説明を含む)、月額費用は18万5000円(取り扱う文書数は5万文書まで)。文書数に応じて、複数の月額料金が用意されている。

開発・販売:株式会社シーアイエス 

 

桜井 勝博氏 株式会社シーアイエス ソリューションサービス営業部 部長
出見世 有紀氏 株式会社シーアイエス ソリューションサービス営業部 ソリューションスペシャリスト

 

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