
今回は京都編。ユーザー側とベンダー側に身を置く2人はどちらも京都の出身。
1人はユーザー側で、現場に足を運びながら「全体を見る」ことと、「コミュニケーション能力を鍛える」ためのスキルを学ぶ。もう1人は、IBM i上でPHPやJavaScriptなどのオープン系言語を駆使する。2人が考えるIBM iについて、話を聞く。
(左から)
廣瀬 大河氏
ヤマウチ株式会社
管理本部 システム開発課
石丸 優大氏
セブンシステム株式会社
第1開発本部
ユーザー側とベンダー側に身を置く
2人のこれまで
i Mag (以下、i Mag) 最初に今までの経歴をお話しください。
廣瀬 プラスティックやゴム製の各種部品を製造しているヤマウチという会社は大阪が本社ですが、私自身は京都の出身です。今年で入社から5年目、27歳になります。大学時代は情報系の学部にいたので、卒業時はIT系を中心に就活していました。入社時からIT部門への配属はわかっていたので、社内SEとして活躍できるのではないかとの期待があって、ヤマウチへの入社を決めました。
石丸 私もやはり京都の出身で、京都に本拠地を置くITベンダーのセブンシステムに勤めています。入社してから7年目、今29歳なので、ぎりぎりZ世代です。私は文学部の出身ですが、個人的に趣味でPCを触るのが好きでした。なので、就職のときはやはりIT系を考えました。ITパスポートとか、いくつか資格を持っていたので、これを活かせないかなと思っていました。
i Mag 現在のお仕事を教えてください。
廣瀬 私の所属するシステム開発課というのが当社のIT部門で、現在は私を含めて3名です。ただしそのうちの1名は経理業務が大半なので、実質的には2名ですね。私が一番若手になります。当社はIBM iユーザーで、基幹システムはIBM i上で運用していますが、RPGによるプログラム開発は課長が担当していて、私はまだ本格的に開発したことはありません。社内のネットワークやPC関連の管理なども私の業務ですが、今のところメインの仕事は生産管理システムの運用管理です。当社は製造業なので、生産管理システムが中核です。一部はIBM iで運用していますし、一部はマイクロソフトのAccessやVBAで作成しています。それらの運用管理が仕事です。
石丸 セブンシステムはITベンダーで、私の所属は第1開発本部です。受託システムをIBM i上で運用されているお客様が中心で、私はそれらのお客様に対して、PHPやJavaScriptを使ってWebアプリケーションを開発する業務に携わっています。だからIBM iを担当していますが、PRGを使う機会があまりなくて、PHPやJavaScriptが中心です。最近はリプレース案件であったり、ゼロからシステムを作るというよりは、IBM iをプラットフォームとして活用し、既存プログラムを活かしてモダナイゼーションしていきたいというご要望が多いですね。
i Mag 初めて5250画面を見たときの印象を教えてください。
廣瀬 大学ではCとJavaを学んでいたので、そうした言語の考え方とはかなり違うという印象がありました。悪い意味ではちょっと暗い気持ちになりましたし、よい意味では何も知らない分、すぐ覚えられるのかなと思いました。いずれにしても、入社したからにはこれでやっていこうとすぐに覚悟を決めました。
石丸 私は面接のときから、IBM iというプラットフォームをメインで扱っているという話を聞いていたので、入社してからIBM iを担当することになっても、それほど違和感はなかったですね。最初から「こういうものかな」と思って、仕事に入った印象です。
若手技術者コミュニティ「RiSING」で
学んだこと
i Mag 時期は違うものの、お二人とも日本IBMが主催するIBM iの若手技術者コミュニティ「RiSING」(ライジング)に参加されたと伺いました。そのお話しを聞かせてください。廣瀬さんはいつ参加されたのですか。
廣瀬 今年RiSINGに参加したので、まさに今、参加している真っ最中です。上司から「こういうコミュニティがあるよ」って紹介されて、それがIBM i関連だったので、すぐに参加を決めました。Power Virtual Server、いわゆるPVSの構築をゼロからやってみようという研究テーマです。当社が近いタイミングでクラウドを検討しているわけではなく、自分の会社がオンプレミス環境の運用なので、クラウドになった時の勉強になるくらいの気持ちでやっています。
私はIBM iのことをあまり知らないので、IBM iを学ぶよい機会になるかなという感じでした。実際のところ、PVSという言葉も知らなかったので、いろいろと勉強している最中です。集まるのは基本的に2週に1回、オンラインです。いまは最終発表が近いので、週に1回の頻度で開催しています。
石丸 私が参加したのは2年前の2024年、ちょうどRiSINGが立ち上がった年です。会社からここに参加してみないかと打診されたのは確かですが、それまであまり初心者向けのイベントがなかったので、RiSINGが若手向けに開催されると知り、ちょっと興味をもちました。そのときのテーマはCode for IBM iで、SEUとの比較が中心でした。実は会社ではすでにCode for IBM iを使っていたので、もう少し知識を深めたいという気持ちもありました。ただほかにVisual Studio Codeを使った経験のある人があまりいなかったこともあって、私がリーダーを務めることになりました。
i Mag RiSINGに参加を決めた動機はなんだったのですか。
廣瀬 私は先ほども言ったように、IBM iに関する知識やスキルがあまり備わっていないという自覚があったので、積極的にイベントやセミナー、コミュニティに参加したいと考えていました。でもやはり一番大きかったのは、他社の担当者と話せる点ですね。会社にいると、会社の人とだけ話すので、視野があまり広がりません。だからほかの会社の人と話してみたいという思いが強かったです。RiSINGという場があるというだけで、すごく刺激になっています。それに、知らないことを知っていく楽しさがあって、終わったあとに、その知識をうまく活かしていけたらよいと思っています。

石丸 私は知識の習得が主な動機でした。メンテナンスやトラブル対応は業務の一環ですが、普段はRPGやCLを使って開発する機会が少なかったので、私も知識が足りないという自覚がありました。だから、Code for IBM iに関する知識だけでなく、IBM i自体の知識を得たいという気持ちが強かったです。
IBM i上で、言語は違いますけど、PHPやJavaScriptを使って開発するので、やはりエディタの中でIBM iに直接つないでデータを見たりとか、CLを見たりできるのはとても便利です。RiSINGでは同じソースプログラムをCode for IBM iとSEUで書いて比較してみたのですが、開発の時間としてはSEUのほうが速かったです。メンバーからは単純にユーザー・インタフェースを比較すればSEUのほうが効率的で使いやすい、でも検索とか置換はVisual Studio Codeのほうが便利だとか、いろいろな意見が出ました。そこがおもしろかったですね。
どのようなキャリアを望むか
これからのキャリア像を語る
i Mag 廣瀬さんは、ご自分が今後のIT部門の後継者であるとお考えですか。
廣瀬 まだはっきりした方針は何も決まっていませんし、組織上は誰も何も言っていません。でも課長は50代ですし、3名のうち1名は主に経理業務を担当していることを考えれば、必然的に現在の会社のIT資産管理を引き継ぐのは自分だという意識はあります。そこでRiSINGもそうですし、外部のイベントやコミュニティに参加して、積極的に情報を収集したり、スキルを身に付けようと努力しています。
i Mag どんなスキルが必要だと考えていますか。
廣瀬 重要なのは、「全体を見ること」と「コミュニケーション力あるいはヒアリング力を磨くこと」でしょうか。ともかくシステム全体を見る、つまりは業務全体を見ることが必要です。そのために私は、なるべく現場に出るようにしています。入社1年目はすべての支社の現場を回りました。全体を考えるのも、コミュニケーション力やヒアリング力を磨くことが必要だと感じました。
i Mag 現場で学ぶことは多いですか。
廣瀬 現場を回る際、係長といったリーダーだけでなく、直接作ってる人に話を聞くのが重要です。相手から話を引き出すだけでなく、どうすれば自分の考えに耳を傾けてもらえるかを常に考えています。それにやっていることは同じでも、その現場の人ごとで言い方が違うことも知りました。そうしたバックグラウンドを頭に入れておかないと、うまくコミュニケーションを進められないことも学びの1つでした。
i Mag 石丸さんは、将来的にどういったキャリア像を描いていますか。
石丸 私は開発を続けていきたいと思っていますが、ただ仕様書通りに書くだけじゃなく、お客様の話を聞いて、「どういう機能がほしいですか」とか「何に困っていますか」みたいな話から始めて、設計、開発、テストまで、一連の業務をこなせるような開発者になりたいです。やはり自分でコードを書いて、動かして作っていきたいと思っています。現場とうまく意思疎通する。これは今の廣瀬さんのお話と重なる部分がありますね。

i Mag 石丸さんは自分でRPGを学ぶのではなく、PHPやJavaScriptで経験を重ねていきたいと考えていますか。
石丸 そうですね、やはりオープン系言語のほうを長く使っているので、そちらの言語でやっていきたいと思っています。ただし今、IBM i 上でもそのあたりの他言語を使う環境がすごく整ってきているので、RPGもオープン系の言語も双方を使いつつ、システムを整備していきたいです。
i Mag RPGを学んでいくのに、なにか抵抗はありますか。
石丸 抵抗ということはないですが、RPGは他の言語と考え方が違うというか、他の言語であればわりと流用や応用できる部分があるんですが、そういう意味ではRPGはちょっと違うと感じます。考え方の違いというか、考え方の切り替えが必要なのでしょう。ただ当社はITベンダーなので、RPGに強い開発人員はいるし、これから勉強していく若手もいます。「RPGだけ、オープン系だけ」というのではなく、RPGの技術者、オープン系の技術者が協調し、ハイブリッドな開発を行っていく必要があると思っています。
i Mag お二人の立場から見て、IBM iをどう捉えていますか。
廣瀬 どうなんでしょうか。当社でIBM iから撤退するという話は出ていないので、それなりに評価は高いと思います。ただ私は今、一生懸命にアンテナを立てて、IBM iについて学んでいる最中なので、うまく答えられる自信がありません(笑)。
石丸 自分がそのビジネスに関わっているから言うわけじゃないですけど、私はIBM iはすごいシステムだと思っています。IBM i以外のシステムを扱うこともあるのですが、たとえばサーバーのキッティングとか移行作業などは、IBM iのほうが安心して進められます。信頼性や安定性は高いし、そのまま持っていったら動くという安心感もあります。私がこう考えるようになった理由は、IBM i開発の本拠地である米ロチェスターを訪問したことが大きいと考えています。
IBM iが優れているのは以前からわかっていたのですが、一方でどうしても古いイメージを払拭できませんでした。でも、IBM iを最新のテクノロジーとして、これほど真剣に作っている人たちがいることにとても感動しました。もっといろいろな使い方ができること、もっといろいろと使っていけるのだということを、お客様にお伝えしていきたいですね。
撮影:井上 翔也
[i Magazine 2026 Autumn掲載]







