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事例|日本サニパック株式会社 ~システム化とRPA化の両輪でDXを推進

COMPANY PROFILE
本 社:東京都渋谷区
設立:1970年
資本金: 2000万円
売上高: 112億円(2018年度)
事業内容: ゴミ袋、食品保存袋、水切り袋など、紙製ゴミ袋などポリエチレン製袋の製造・販売
http://www.sanipak.co.jp/

伊藤忠商事の100%子会社で、日本のゴミ袋メーカーのなかでは唯一、年間3万トン規模の自社工場をもつ。インドネシアにある3つの製造工場では現在、業務の改善と広範囲の機械化・自動化が進行中だ。今年5月の創業50周年に合わせて、会社のスローガンを「きれいな地球と、きれいな心を。」とし、会社のロゴマークも変更した。環境にやさしい環境配慮型商品のゴミ袋の開発にも力を入れている。

 

 

 

インドネシア工場のカイゼン活動を
日本サイドへ拡大し、DXへ

 家庭用・業務用ゴミ袋で国内シェアトップを誇る日本サニパックは、現在、組織横断的なプロジェクトを立ち上げ、デジタル・トランスフォーメーションを推進中である。

 同社は、従業員84名と小規模ながら売上規模は100億円を超え、インドネシアにアジア有数の製造拠点(従業員900名)をもつ。そのインドネシア工場で2018年に始めた「カイゼン(改善)」活動を日本サイドへも拡大し、全社的な取り組みとしたのがDXへ向けたプロジェクトである。

「当社の業務を見直すと、FAXやExcelを使うものが至るところにあり、情報の共有や見える化、業務効率化の大きな壁になっています。その壁を取り除くために業務のデジタル化を徹底して進め、グループ全体のリードタイム短縮や在庫の最適化、需要変動へのすばやい対応、原価低減などを実現させるのがデジタル・トランスフォーメーションの目的です」と説明するのは、物流企画・情報システム本部の宇野康典氏(情報システム課長)である。同氏は、異なる部署の4名で構成されるプロジェクトの推進メンバーも務める。

 宇野氏は業務のデジタル化について、「システム化とRPA化の両面で進める方針」と、次のように話す。

「DXを支える企業システムの要件は、優れた柔軟性と安定性、高速性を備えていることですが、プログラムを組んでシステム化できるものはシステム化したほうが、処理スピードが速く、より安定した運用が行えます。RPAが得意なのは、そうしたシステム化に乗らない部分の自動化で、骨組みとなるシステム化と細かい部分の自動化が可能なRPA化をうまく組み合わせることによって業務の完全な自動化を実現できると考えています。システム化のなかではAIの活用も視野に入れ、取り組みを始めています」(宇野氏)

 そして、RPAをそのように捉える同社が採用したツールが、三和コムテックのAutoMateである。選定時には著名な3つの製品も検討したが、機能・操作性・コスト・導入実績・サポートのすべての項目で〇が付いたのはAutoMateだけだったという。

「AutoMateにはさまざまなトリガー機能があり多様な業務に柔軟に対応できることに加えて、IBM iとの連携のしやすさを優位点として高く評価しました。また、他の3製品がサブスクリプションを採用していて毎年かなりの料金がかかることも、AutoMateを選択した大きな理由です」と、宇野氏は話す。

 

取引先2000社の与信情報を
AutoMateで自動収集 

 AutoMateを使って最初に自動化したのは、インターネットを対象にした与信情報の収集業務である。

 同社では、取引のある約2000社の与信情報を四半期ごとに収集し、分析を行っている。作業としては、対象企業名とキーワードでインターネット検索をかけ、リストされた情報を印刷してPDF化し、管理表に記入するというものだが、従来は管理本部のスタッフが手分けをして手作業で行っていた。

 RPA化したのは、Webブラウザの起動から管理表への記入までのすべてのプロセスである。開発はシステム課が行ったが、初めてのRPA化だったにもかかわらず「2週間もかかりませんでした」と、宇野氏は振り返る。そしてこのRPA化により、年間266時間かかっていた人手による作業が不要になり、266時間の余力化を実現した(図表1)。与信情報を収集するロボットは夜間走行し、社員が出社してくるときにはデータが揃っている状態という。

 

 

WebEDI処理のRPA化で
年間1144時間を削減へ 

 同社が次に取り組んだのは、WebEDIの仕組みを使う受注業務の自動化である。

 同社では顧客からの注文を、家庭用製品に関しては主として外部EDIサービスで、業務用製品に関しては顧客の意向に応じてWebEDIやFAXで受けている。このうちFAX受注に対してはOCRを導入し作業負荷の軽減を図っているが、WebEDIのほうは顧客の発注サイトにログインし、発注データをダウンロードして、さらにIBM i上の受発注システムに登録するという作業が必要である。

 AutoMateで自動化したのは、Webブラウザを立ち上げて顧客のWebEDIページにログインし、いくつかの画面操作を行った後、発注データをダウンロードして所定のフォルダに保存するところまでのプロセスである。その後の保存データをIBM iへ登録するまでのプロセスは、従来から利用してきたExcelベースの開発・運用ツール「EVOLIO」(グローバルITサービス)を用いてシステム化した(図表2)。

 ただし、WebEDIは顧客ごとに発注ページの仕様・構成や発注データをアップするタイミングが異なるため、個々にロボットを作成する必要がある。現在は、対象となる13社のうち3社のWebEDI用ロボットを完成し稼働させているが、13社すべてのロボットが揃うと、年間1144時間の作業をゼロできる、と同社では見込む。

 

 

ロボットの開発・運用は
システム部門の担当へ 

 AutoMateの開発・運用については、導入当初、ユーザー部門が行うことを想定していた。しかし、多くの業務を抱えて多忙なユーザー部門にロボットの開発・運用を任せるのは困難と判断し、現在はシステム課の担当としている。

「ロボットが突然停止した場合の対処や、RPAツール独特の開発・運用作法を業務部門の人に習得してもらうのは、無理があると考えています」と、宇野氏は述べる。

 ロボットは、与信情報収集用の1台とWebEDI用の3台を開発済みで、時間をずらして1台のAutoMateで運用している。

 宇野氏は、「AutoMateを適用できる業務はまだまだあり、想像以上に多方面に使えそうです。次にライセンスを増やすときはロボットの管理機能を備えるサーバー版を導入する予定です」と語る。宇野氏は、さまざまなロボットが縦横に稼働する将来図を描いている。

 

宇野 康典氏 物流企画・情報システム本部 情報システム課長

 

[i Magazine 2020 Spring(2020年2月)掲載]

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