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事例|株式会社 神戸風月堂 ~ドットプリンタ・専用伝票を一部廃止、プリンタ環境の刷新へ向けて動く

COMPANY PROFILE
本 社:兵庫県神戸市
創業:1897年
設立:1976年
資本金:8000万円
従業員数:約600名
事業内容:和洋菓子の製造販売・喫茶・レストラン経営
http://www.kobe-fugetsudo.co.jp/

港街・神戸で誕生して以来、120年の歴史を積み重ねてきた。独特の口あたりや感触、香気が特徴で、神戸の代表銘菓ともいわれる「ゴーフル」をはじめ、多彩な和洋菓子を製造・販売する。 今も神戸・元町に構える本店は赤レンガの瀟洒な建物が人目を惹き、当時の港町だけがもつモダンでハイカラな雰囲気を残しつつ、本店限定の生菓子や洋菓子を取り揃えている。

 

 

カット紙へ移行し
ドットプリンタを廃止したい

 明治、大正、昭和、そして平成の各時代を超え、神戸風月堂は2017年12月に創業120年を迎えた。その歴史を紐解けば、創業は松平定信公への常用菓子を進呈していた江戸時代中期にまで遡る。

 現在も本社・本店のある神戸・元町に開店したのは、明治30年である。モダンな雰囲気の漂う当時の神戸でもまだ珍しかったバルコニー付きの欧風建物で、 神戸では最初の洋菓子であった「マロングラッセ」の製造販売を開始した。

 サクサクと香ばしい薄焼きの生地に上品な甘さのクリームをサンドした代表銘菓「ゴーフル」を販売し始めたのは昭和2(1927)年。現在は洋菓子から和菓子まで、多彩な商品を提供している。

 同社は1985年にシステム/36を導入し、販売・製造・物流の各業務を支援する基幹システムをRPGで構築した。それ以来、システム改修を重ねつつ、現在に至っている。

 ITを担当するシステム課は4名で構成され、全員がRPGでの開発・保守を担う。導入以来一貫して、いわゆるアプリケーションの開発・保守を社内の人員で担う「内製主義」「自前主義」の方針を掲げてきた。

「ただし昨年、当社のシステムを端々まで熟知し、開発・保守の中心的な存在であった私の上司が定年退職を迎えたこともあり、その数年前から、残されたメンバーでアプリケーションを今後どのように開発・保守していくかを検討し続けてきました。そこでまずはハードウェア的な運用保守作業を軽減しようと、ファイルサーバーやメールサーバーなどのPCサーバーを段階的にクラウドサービスへ移行することを決めました。

 現時点までで、13台あったPCサーバーのうち8台のクラウド化を終了しています。残る5台はまだオンプレミスで稼働していますが、最終的には基幹システムを運用するIBM iも含めて、この先すべてのサーバーをクラウド環境へ移行したいと考えています」と語るのは、システム課の小川晃宏課長である。

 このほかにもシステム課では、オンプレミスで運用していた売場店舗管理システムを、Webアプリケーションとして刷新するプロジェクトにも着手している。

 一方、システム課の掲げるこうしたITの課題とは別に、全社的なテーマとなっていたのが、プリンタ環境の刷新である。

「ドットプリンタを廃止したい、という課題がかなり以前から議論されており、こちらは経営企画室を中心に検討を進めていました」と、経営企画室の片山典一室長は語る。

 同社では物流センターを中心に、12台のドットプリンタを導入し、社内伝票に加えて百貨店、量販店、小売店など取引先に応じた専用伝票を使用しながら印刷業務を行っていた。

「ドットプリンタの生産が縮小傾向にあることを考慮し、専用伝票に要する外注コストの削減などにも対応するため、伝票をカット紙へ移行し、オフィス複合機での印刷を可能にしたいとの要望が以前から寄せられていました。そこでこの案件については、経営企画室が中心となって、ツールや実現手法を検討することになりました」(片山氏)

 

「UT/400-iPDC」を導入し
IBM iからオフィス複合機へダイレクト印刷  

 契機となったのは、2018年9月に大阪で開催された「UOS関西 IT POWER UP フェア 2018」である。

 片山氏とともにこのイベントに参加した経営企画室の竹内宏次課長らは、IBM iに対応したグラフィカルPDF作成ツールである「UT/400-iPDC」(アイエステクノポート)の存在を知ることになる。

 専用オーバーレイ機能を活用して、IBM iのスプールデータからグラフィカルなPDFを作成するUT/400-iPDCは、IBM i上で稼働し、PCサーバーの別途導入が不要なことから、運用保守の軽減を目指してクラウド化を進めていたシステム課のニーズとも合致すると判断した。

 イベント後にさっそく経営企画室とシステム課の担当者が東京のアイエステクノポート本社に足を運び、細かな機能要件を確認。2019年6月に正式採用を決定した。導入したのは、UT/400-iPDCと、そのオプション製品である「UT/400-iPDC ダイレクト印刷オプションfor Konica Minolta」、それにコニカミノルタのオフィス複合機2台である。

 これにより、生成したPDFファイルをプリンタサーバーやプリンタセッションを経由せず、IBM i からダイレクトに印刷することが可能になる。

 

 同社では、最終的にはほぼすべての専用帳票をカット紙へ移行することを目標に掲げているが、UT/400-iPDCによる最初の対象帳票に選んだのは、納品伝票として使用する社内伝票であった。

 システム課では小川氏が中心になって、UT/400-iPDCのオーバーレイ機能を活用し、現行の社内伝票をそのまま再現する形で、連続帳票をカット紙にレイアウトし直した。そして2019年8月からテスト運用、同年10月から本番運用を開始した。

 13台を導入していたドットプリンタのうち3台の利用を停止し、2台のオフィス複合機へ印刷業務を移行している。

「簡単な操作説明を受け、不明点については都度、アイエステクノポートのサポートを受けながら帳票設計を進めました。すぐに操作を覚えられたので、帳票設計についてはスムーズに進められた印象です」(小川氏)

「この社内伝票は、月間で約2万枚を出力しています。今回の導入で専用伝票の外注費は削減できましたが、現行伝票のレイアウトをそのまま移行したので、2万枚という出力枚数そのものはまだ軽減されていません。そこで物流センターの担当者と連携しながら業務改革を進め、運用や帳票レイアウトを変更し、今後は伝票の出力枚数そのものを削減できるように、検討を進めていく予定です」(竹内氏)

 さらに百貨店、量販店、小売店など取引先ごとに使用している専用伝票の移行も進めていく方針だ。ただしこれは取引先の意向、それにインターネットEDIや流通BMSとの兼ね合いなどもあるので、慎重に対応しながら実現していく予定であるという。

片山 典一氏 経営企画室 室長
竹内 宏次氏 経営企画室 課長
小川 晃宏氏 システム課 課長

[i Magazine 2020 Spring(2020年2月)掲載]

 

 

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