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鈴木 明一氏|アプリケーション重視でお客様軸のアプローチへ転換する ~100年存続する企業を目指し、顧客満足度と社員満足度の高さを追求

Interview|鈴木 明一氏

ベル・データ株式会社
代表取締役社長

 

 

製品を使う顧客を見据え
アプロ—チを転換する

i Magazine(以下、i Mag) どのような経緯で、ベル・データに入社されたのですか。

鈴木 私が25年勤めた日本IBMからベル・データへ出向したのは、2010年1月のことです。当時の日本IBMは新しいビジネスパートナー戦略を打ち出しており、営業力の強化や営業人材の育成に向けて、社員をさまざまなビジネスパートナーへ出向させていました。その一環として、私は日本IBMの5名の社員とともにベル・データに出向し、営業部長を務めました。その後、2012年7月に日本IBMを退社し、正式にベル・データへ籍を移しました。当時の社長であった小野寺洋は、ハードウェア中心であったビジネスモデルをソリューションやサービス主体へ転換する経営方針を掲げており、私も日本IBMでの経験を活かしながら、それを推進する役割を担いました。

i Mag 出向された当時の、ベル・データの印象はどうでしたか。

鈴木 社員はとても真面目で、足繁くお客様の元に通い、信頼を勝ち得る良好な関係を築いていました。ベル・データの遺伝子を受け継ぎながら、綿々と強い営業力を育んできた印象です。ただしお客様の課題や問題点を把握し、お困りごとや悩みに寄り添い、積極的に解決策を提案していたかと言えば、必ずしもそうではありません。単なる「御用聞き」では、ソリューションやサービスを軸としたビジネスを推進するのは難しい。そこで、お客様視点での提案力を養うことを人材育成の核に据えました。今もまだ発展途上ではありますが、私が出向した当時から比べると、人材はずいぶん成長したと感じています。お客様の課題はさまざまですから、どんなケースにも対応できるように、私も含めてさらに知識や見識、スキルを高めていかねばならないと考えています。

i Mag 2018年10月に、小野寺前社長の後任として、代表取締役社長に就任されました。鈴木流の新しい経営方針を打ち出されたのですか。

鈴木 私の社長就任で、経営方針を大きく変えるつもりはありません。100年存続する企業、お客様満足度と社員満足度のどちらも高い会社づくりを目指します。当社では2017年9月に、小野寺の命により、社長を除く経営幹部全員で今後5年の中期経営計画を策定しました。今後もそれに沿って事業を進めますし、「誠実であれ(Be honest)」という社是も、「お客様の成長と発展に貢献すべく、なにごとにも誠実に対応してまいります」という経営理念も同じです。

 

Power Systems市場での
顧客満足度No1.ベンダーへ

i Mag 新機軸は打ち出されないのですか。

鈴木 既存の方針を、さらに拡張しようと考えていることが2点あります。1つは製品軸のアプローチから、製品を使うお客様を軸にしたアプローチへ転換することです。つまりPower SystemsやIBM i という製品を軸にするのではなく、それを利用するお客様を軸に考える。製品依存型のビジネスではなく、アプリケーションを中心にお客様の経営や業務を改善し、課題を解決していこうというアプローチです。

 お客様軸で考えると、IBM i の製品スキルだけではお客様の要件を満たすことはできません。オープン系のさまざまな技術、ネットワークやセキュリティに関わる広範な技術、各種クラウドを活用できる組み合わせ技術など、多くのチャレンジが求められます。

 そしてもう1つが、「nice to have」から「must have」への転換です。つまり「あると便利」という発想のサービスに加え、「なくては仕事にならない」という大きな責任が伴うサービス環境も創造します。当社のご提供するソリューションやサービスを使っていただき、業務の周辺のみならず、業務の中枢にも入っていきたいと思っています。そのためには、私も社員も自己の成長と若手の育成に取り組んでいかねばなりません。成長を継続させる基本姿勢が「誠実に」であり、私はそれに1つ加えて「謙虚に」というメッセージを発信しています。 

i Mag 業績は好調のようですね。

鈴木 おかげさまで、28期となる2018年9月期の決算では、売上78億円を計上する予定です。32期を迎える2022年9月期で売上100億円を目標に掲げていますが、今のまま進んでいけば、前倒しすることも可能だと考えています。

i Mag 現在の事業戦略を教えてください。

鈴木 お客様の情報システムに関わるすべてのご要望にお応えすべく、「One Stop Service 」を掲げています。これはアウトソーシング、クラウドサービス、アプリケーション開発・保守、機器・ソリューション提供、インフラ構築サービス、サポートサービスの6つで構成されています。先ほどもお話ししたように、製品軸ではなく、お客様の経営や業務を支えるアプリケーション重視の体制を築くべく、2018年4月にはアプリケーション統括部、さらに2018年10月には組織を拡大し、アプリケーションビジネス本部を発足させました。これはアプリケーションの可視化、改修、保守、新規開発、そして他サーバーからの移行を担当する部門です。IBM i の既存資産を分析・可視化する「X-Analysis」をはじめ、さまざまなツールを利用して、お客様のアプリケーションの刷新・高度化に取り組んでいます。

i Mag IBM i市場に向けては、どのようなスタンスですか。

鈴木 IBM iは当社事業の柱であり、Power Systems市場での顧客満足度No1.ベンダーを目指しています。2019年の3月と9月に、Power Systemsの一部モデルが保守終了を迎えるので、今年はEOS(End Of Sup
port)案件が活発化しています。それを受けて、IBM iのクラウドサービスである「Power-Cloud for i」への移行案件も目立ちます。また国産汎用機やオフコンなどからIBM iへのマイグレーションも活発です。今年は大型のマイグレーションプロジェクトをいくつも受注し、移行作業を進めています。

 そうしたケースでは、当社独自の技術力や開発力、サポート力に加えて、パートナーの協力が必要です。実際のところ、お客様の多種多様なご要望にお応えするには、パートナーの力を結集したエコシステムを形成することが不可欠ですから、そうしたチームづくりやコーディネーションにも力を入れています。さらに地方のお客様を支援すべく、北海道から沖縄まで、サポート体制の確立に注力しています。最新技術や先進事例などの情報を求められるお客様が、全国に驚くほどたくさんいらっしゃいます。今後も対応可能な守備範囲を少しずつ拡大し、お客様から信頼されるITソリューション・インテグレーターを目指していくつもりです。

[i Magazine 2018 Winter(2018年11月)掲載]

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