IBM i ベンダー各社の取り組み(下)|Power Systems Virtual Serverを考える⑤

 

 

 

 

株式会社IIJグローバルソリューションズ

クラウド専業ベンダーならではの
ネットワークマネージドサービスに特色

 

 2013年にスタートしたIBM iのIaaSサービス「IIJ GIO Power-iサービス」は年々ユーザー数を増やし、2021年3月末には「200社を超える見込み」である。クラウド専業事業者としての豊富な経験と実績、そのなかでもクラウド移行の肝となるネットワーク関連サービスのワンストップ提供や高可用性を担保するコールドスタンバイ機の標準装備、さらには仮想テープライブラリ機能などIBM iユーザーの要望に応えるサービスの提供が好調の要因、と同社では分析する。近年は、自然災害(地震・風水害)対策としてのクラウド採用が増え、昨年のコロナ禍では「在宅勤務への緊急対応として、オンプレミスからIIJ GIO Power-iサービスへ短期間で移行した例がある」という。

 IIJ GIO Power-iサービスと同じIaaSサービスであるIBM Power VSに対しては、「大いに歓迎し、期待しています」と次のように説明する。

「IBM iのクラウド化については、これまでIBM自身がクラウドサービスを提供していなかったために不安視する声が少なからずありました。今回のPower VSによってその懸念が払拭され、ユーザーもベンダー各社もクラウドへの取り組みを本格化させ、IBM iクラウド市場が活性化する大きな契機になると考えています」

 ただし、「オンプレミスでIBM iを運用してきた中堅・中小ユーザーや多くのIBM iベンダーにとっては、ネットワーク関連のスキルおよびコスト面でハードルが高いのではないか」と話す。

 図表5は、Power VSを利用するためのネットワークを、信頼性・セキュリティ・構築/運用の難易度などの項目で同社が整理したものである。5種類のネットワークそれぞれに特徴があり(コストはネットワークの組み方・接続方法によって異なるため記載していない)、Power VSに搭載するシステムの要件に応じてネットワークを選択する必要がある。「その判断が、IBM iユーザーやベンダーにとっては難しいだろう」と指摘する。

 

 

 同社では、IBM iのクラウド移行を促進するために、次の3つの取り組みを推進中である(図表6)。

①IBM iパートナー各社との協業によるクラウド移行支援

②Power VS接続のための安価でセキュアなアクセスネットワークの提供

③災害対策のためのIIJ GIO Power-iサービスとの相互接続などを目的としたPower VSとの連携

 ②のサービスは、Megaport接続やIPsec VPN接続のための回線・機器類を同社が調達し、複数のユーザーへ再販するもの。

「当社の強みであるネットワークの知見を活かして、Power VSへのスムーズな移行をご支援していくつもりです」と抱負を語る。

 

 

三和コムテック株式会社

HA・バックアップなど4製品を提供
Power VS対応を積極的に進める

 

 HA・DR、バックアップ、セキュリティ、テレワークなど幅広いジャンルでIBM i対応製品をラインナップする三和コムテックでは、Power VSへの対応を積極的に進めている。

 その第1弾として発表したのは、MIMIX、LaserVault、iSecurity、Telework4iの4製品。いずれも他のクラウドサービスで実績のある製品という。

 MIMIXは、IBM i用のHA・DRソリューションで、MIMIX Enterprise、Professinal、DRの3つのエディションがある。日本市場では約30年の歴史があり、300社以上の導入実績をもつ。クラウド環境では、オンプレミス-クラウドのバックアップソリューションとして採用されている。

 Power VS上にMIMIXを配置すると、オンプレミス(本番機)-Power VS(バックアップ機)、Power VS(本番機)-Power VS(バックアップ機)など多様な構成が可能。オンプレミスで利用中のユーザーは、ライセンスをPower VSへ持ち込んで継続利用が可能である。

 LaserVault Backup/同ViTLは、IBM iのバックアップソリューションである。Power VS上で利用することにより、IBM Cloud上のICOSやオンプレミスのストレージなどへのバックアップが可能。また世代管理やデータのリストアなど多様なデータ管理も行える。

 iSecurityは、IBM iのOS機能がカバーしない多様なセキュリティ機能を提供し、IBM i上の資産・システムを保護するツールである。ファイアーウォールや監査など機能別に約10のモジュールから成り、モジュールごとに利用できる。

 Telework4iは昨年4月にリリースされたIBM iへの5250アクセスサービスである。Webブラウザを使ってPC・スマホ・タブレットからアクセスできる。

 Telework4iは現在、AWS上に配置されているため、Power VS上のIBM iへはAWS経由のアクセスになるが、「パフォーマンスはまったく問題ない」と同社は話す。またPower VSの利用が増えた段階でIBM Cloud上にTelework4iを配置する計画。「Power VSとの連携のしやすさや接続のコスト面でメリットがある」という。料金は買い切りと月額制の2種類があり、月額制の場合は月1万円〜。

 執行役員の東條聡氏は、「今後市場に投入する製品はすべて、Power VS対応を念頭に月額料金制に統一する予定です。Power VSを機に、日本市場でもIBM iクラウドがさらに拡大していくと見ています」と語る。

 同社のIBM i対応製品は、既存製品だけでも約40種。Power VS対応の拡大は「2021年のテーマの1つ」という。

 

 

株式会社ランサ・ジャパン

オンプレミスで実施中の「レンタル」にも対応
ユーザーの要望にスピーディかつ柔軟に対応

 

 ワールドワイドで多数のユーザーをもつIBM i開発ツールの「LANSA」は、すでに国内外のクラウドで提供が進んでいる。日本国内では「10社以上」(代表取締役社長の中村哲氏)の実績があり、そのなかにはクライアント/サーバー版の「Visual LANSA」をAWS上に導入して利用中のユーザーもいるという。

 Power VSに関しては、日本語環境での動作検証を終え、マシンシリアル問題への対応を検討中である。

 中村氏は、クラウドサービスのメリットを高く評価しつつも、IBM iユーザーが利用する場合、「事前調査と綿密な検討が必要です」と注意を促す。

「クラウドサービスは、インフラのメンテナンスを不要にしたり、さまざまなサービスを手軽に実装できるなどのメリットがあります。ただし、手間のかからないIBM iを移行して本当にメリットが得られるのは、IBM iでも手に余る深刻な問題に直面しているユーザーだけで、期待感を先行させてクラウド化を進めると、オンプレミスのときと何も変わらないということになりかねません。自社の課題を整理し、クラウドで何が解決できるのかを精査することが、クラウドを検討するIBM iユーザーに必要ではないかと見ています」(中村氏)

 Power VSを利用するユーザーには、通常のライセンス提供のほかに、オンプレミスで実施中の「レンタル」にも対応する予定。これは、LANSAを月単位で利用できるサービスで、「LANSAで開発したアプリケーションを最新のIBM i環境でテストしたいという場合などに向いています」と、中村氏は話す。

 そのほか、「クラウドではオンプレミスとは違う使い方も考えられるので、お客様のどのようなご要望にもスピーディに、かつ柔軟に対応していきたいと考えています」と、取り組み方針を述べる。

 

 

ベル・データ株式会社

Power VSユーザー向けに
PoCサービスと災害対策システムを提供

 

 2011年の東日本大震災をきっかけにIBM iのクラウドサービス(Power-Cloud for i)を本格的にスタートさせたベル・データは、その後継続的にクラウド基盤を拡充し、現在は東京・埼玉・名古屋・大阪・福岡の5カ所にデータセンターを配置し、IaaSからSaaSまで多種多様なサービスを展開中である。2020年末の利用実績は115区画。「うち80%以上は基幹システムの本番利用で、従業員100名以下のお客様が60%以上を占めます」と、デジタルビジネス&マーケティング推進本部の細越直人氏(ソリューション統括部 統括部長)は話す。

 同社のクラウドサービスは、低料金とオンプレミス並みの多様なサービスが特徴である。

「中堅・中小のお客様にとっては月額10万円の料金を超えるとクラウドへの移行が厳しくなるのと、基幹システムを移行させたお客様は、オンプレミス同様のサービスを求められるためです。システムサポートや災害対策、データ活用などの多様なオプションは、お客様のニーズにきめ細かくお応えしてきた結果です」と、細越氏は理由を説明する。このほか、パフォーマンス分析や障害切り分けなどのシステム運用支援をワンストップで提供する「ベル・データ 安心パック for i」などもあるという。

 最近の傾向としては、「中・大規模のお客様が増えていると、アプリケーション保守に対する引き合いや利用が多くなっています」と、ソリューション統括部の松永道子氏(クロスセールス推進部営業支援 課長)は語る。

「クラウドのほうがむしろ安全で効率的という認識が大規模なお客様の間でも広がりつつあるのと、BOMSという24時間365日のインフラ監視サービスをご利用になれることも安心材料となり、中・大規模のお客様の利用が進んでいると見ています」(松永氏)

 Power VSについては、「IBM iのクラウド利用の広がりに弾みをつける、非常によい動き」と、細越氏は次のように述べる。

「Power VSのようなグローバルスタンダードのIaaSを身近に利用できることは、日本のお客様にとって大きなメリットだと見ています。海外に事業拠点をお持ちなら、Power VSのネットワークを利用して、日本において一元的な運用管理も可能です。開発・テストなどで最新のPower Systemsを簡易的に使いたいという場合にもさまざま利用が可能になります。また、当社のようなクラウドベンダーにとっても、多様なIBM iクラウドサービスを構成できるようになる点で、非常に大きな意味があります」

 ただし細越氏は、「Power VS上で基幹システムが本格的に利用されるのはもう少し先では」と見ている。

 同社が今、提供を始めたのは、Power VS上の「PoCサービス」と、Power VSを利用する災害対策システムである。

 PoCサービスは、オンプレミスからPower VSへの移行やPower VS上での各種検証・テストなどをサービスとして提供するもので、「Power VS上でシステムを本当に使えるのか、本番運用に耐えられるのかを、さまざまな状況を想定して検証するサービス」という。 

 災害対策システムは、ベル・データのデータセンターに本番機を配置し、Power VS側にバックアップ機を配するサービスである。導入から災害・障害時の切り替え支援までをカバーしている。また、同社は本番機利用を踏まえた監視&運用サービスも準備を始めており、近々にリリース予定。

「当社のPower-Cloud for iとPower VSは、これからも成長していくサービスです。IBM iのお客様には、両者の“いいとこどり”となるハイブリッドなサービスを今後もご提供していく予定です」(細越氏)

 

 

 

関連記事:Power Systems Virtual Serverを考える

①本格始動のIBM iクラウドサービスは、課題解決の突破口か

②  IBM Power Systems Virtual Serverを詳細チェック!

③ IBM iベンダーのPower VS戦略

④IBM iベンダー各社の取り組み(上)

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⑤IBM iベンダー各社の取り組み(下)

 ・株式会社IIJグローバルソリューションズ
 ・三和コムテック株式会社
 ・株式会社ランサ・ジャパン
 ・ベル・データ株式会社

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