IDC Japanは6月9日、最新の国内ソフトウェア市場の実績と予測を発表した。
IDCでは、ソフトウェア(パブリッククラウドサービスを含む)市場を3の大分類市場、20の中分類市場、および79の機能市場に分類し、国内市場を含むグローバルなベンダー売上額および市場予測を「IDC Worldwide Semiannual Software Tracker 」として提供している。
2025年5月に発行した同レポートでは、ソフトウェア市場のグローバル売上額は2024年(2024年1~12月)に前年比13.4%増の1兆1005億米ドルとなった。
一方、国内ソフトウェア市場は前年比12.1%増の5兆3729億3300万円になったと推定している。
IDCでは2024年の国内ソフトウェア市場は、AI/生成AIの企業での活用の本格化、アプリケーションのモダナイゼーション更新、サイバーセキュリティ対策の増加などによって国内企業のソフトウェア投資を押し上げ、堅調に成長したとみている。
特に生成AIを含むAIプラットフォーム市場、AIの学習データ、生成コンテンツを管理する基盤としてのデータ管理とコンテンツ管理市場、AIを活用した顧客エクスペリエンス(CX)向上のためのCRMアプリケーション市場、サイバーセキュリティ/ガバナンス対策のためのセキュリティソフトウェア市場が2024年に成長し、市場を牽引した。
またソフトウェア市場の中でパブリッククラウドサービス売上は2024年では前年同期比22.1%増の2兆3386億円500万円と高い成長を維持し、全ソフトウェア市場の43.5%を占め、初めて2兆円を超える規模になった。
2024年のソフトウェア大分類市場のトレンドは以下のように推移した。
アプリケーション開発/デプロイメント市場
前年比15.8%増、1兆3455億2400万円、AIプラットフォーム市場は高成長を継続し(前年比67.1%増)、アナリティクス/BI市場(同15.3%増)、アプリケーション開発ソフトウェア(同10.5%)、データベース/データレイクなどを含むデータ管理市場(同7.5%増)が前回予測を超える成長を遂げ、同市場全体の成長を牽引した。これらの市場では、AI活用の本格化に伴う学習データや参照コンテンツの管理や、AIを利用したアプリケーションコード生成やデータ分析などの需要が高まり、市場成長が高くなったとみている。
アプリケーション市場
前年比11.6%増、2兆3843億7800万円、CRMアプリケーション市場(同14.6%増)、コンテンツワークフロー管理市場(同14.3%増)、およびERMアプリケーション市場(同12.1%増)が成長を牽引した。これらの市場では、生成AIやAIエージェントの組み込み/連携が開始されており、業務の自動化やモダナイゼーションに対応した更改要求が強かったとみている。
システムインフラストラクチャソフトウェア市場
前年比9.8%増、1兆6430億3000万円、セキュリティソフトウェア市場(同14.6%)、ストレージソフトウェア市場(同7.3%)が高成長となった。AI活用に向けたデータ保全、データガバナンスとセキュリティ運用など、AI活用に伴う市場拡大があったとみている。
2025年6月現在、国内経済状況は地政学的不安定、貿易/為替状況の不安定さやインフレーション懸念などによって、先行きが不透明な状況にある。これに伴って、企業によるIT投資の成長が緩やかになる可能性が予測される。
IDCでは先行き不透明な市場状況を織り込み、2025~2026年のソフトウェア市場成長は2024年と比較して緩やかになると予測しているが、2027年以降は次第に成長は回復するとみている。
特に業務効率化のための生成AI/AIエージェントの業務組み込みや、これに伴うデジタルCXにおける自動化、サイバーセキュリティ対策に向けたソフトウェア投資は2025年以降も堅調に成長し、国内ソフトウェア市場は2024~2029年の年間平均成長率(Compound Annual Growth Rate:CAGR)が10.2%で成長し、2029年に8兆7261億円に達すると予測している。
各ソフトウェア大分類市場の2024~2029年のCAGRは、アプリケーション開発/デプロイメント市場は17.9%、アプリケーション市場は7.1%、システムインフラストラクチャソフトウェア市場は7.0%になるとIDCではみている。
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