生成AIは、人間が入力するプロンプトに基づき、テキストや画像を生成するというのが一般的な使われ方である。しかしAI技術は日進月歩であり、現在、その進化は新たなステージ、すなわちAIエージェントへと向かっている。
AIエージェントは、単に指示を受けて確率論的にこうであろうと思われる文章を返すのではなく、与えられた目標を達成するために自律的に計画を立案し、行動し、結果を評価する能力を持つAIシステムである(図表1)。

AIエージェントとは
AIエージェントの核となるのは、目標達成に向けた計画と自律にある。ユーザーの入力したプロンプトに応じた出力を提供するために、自ら計画し複雑なプロセスを経て結果を返す。与えられた質問に対する回答を出すためのプロセス全体を自身で管理しているのだ。
AIエージェントは、一般的に以下のサイクルを回しながら、タスクを遂行していく。
計画
与えられた目標を達成可能な複数のサブタスクへと分解し、具体的な行動計画を立案する。その際に追加の情報が必要であれば、適宜ユーザーにその旨を通知する。
ツール利用
計画の実行に必要な外部ツールやリソースを自ら識別し、適切に選択・使用する。これにはWeb検索エンジン、プログラミング環境、各種API、データベースなどが含まれる。
実行
立案された計画に基づき、選択したツールを操作しながらタスクを実行する。
自己評価と修正
実行結果や外部からのフィードバックを評価し、当初の目標達成度を確認する。計画が期待どおりに進まない場合や、よりよい方法が見つかった場合には、自ら戦略を修正し、必要に応じて新たな計画を立案して再実行する。
このサイクルを実行することで、AIエージェントは試行錯誤を繰り返し、複雑な問題解決や目標達成を目指す。まさに、人間が何かの作業を成し遂げる際に行う内容を代わりにAIが遂行しているわけだ。あたかも人間が業務を進める上での思考プロセスを、AIが模倣しているかのようである。
また、自律型AIエージェントという言葉は、AIエージェントの中でも特に人間の介入なしに高度な自律性を持つシステムを指す場合が多く、両者は密接に関連している。
AIエージェントの進化
AIエージェントの進化は、特に大規模言語モデル(LLM)の進化と深く結びついている。
LLMによる推論能力の向上
OpenAIやGoogleおよびAnthropicは日々、自社のLLMに新しい機能を追加しており、LLMは与えられた情報を深く理解し、複雑な状況から論理的な結論を導き出す能力を発展させている。
これにより、AIエージェントはより高度な思考を通じて、多段階にわたるタスクの計画を立案し、予期せぬ状況にも柔軟に対応することが可能となった。
自律性の向上と人間介入の最小化
初期のエージェントは人間による頻繁な介入が必要であったが、LLMの進化により、エージェント自身の内部ループで反省や修正を行う能力が強化され、人間からの指示なしにタスクを遂行できるようになった。これにより、開発者やユーザーはより高次の目標設定に注力できるようになったと言える。
マルチエージェントシステムの登場
近年では単一のエージェントだけでなく、複数のAIエージェントが互いに連携し、共通の目標達成のために協調して動作するマルチエージェントシステムの研究・開発も進んでいる(図表2)。

各エージェントが異なる役割や専門性を持ち、複雑な問題を分担して解決することで、単一エージェントでは達成困難なタスクも効率的にこなすことが期待されている。
2026年2月現在話題となっているClaude CodeのAgent Teams機能は、まさにこの形態を実現したサービスと言えよう。
AIエージェントの活用事例
AIエージェントを謳ったサービスはたくさんあるが、普段よく使われている例としては、Deep Researchが最も身近なAIエージェント的な機能ではないだろうか。
Deep Researchは、ChatGPT、GeminiおよびClaudeでそれぞれ提供されている機能である(Claudeの名称は「リサーチ」)。Deep Researchはプロンプトが与えられると、以下のような手順を経て結果を返す(図表3)(サービスごとに詳細な手順等は異なる)。
① 調査計画を自動作成
② 計画をユーザーに提示
③ Webを横断的に検索
④ 収集した情報を評価
⑤ 結果のレポートを作成

もっと狭義の意味でのAIエージェントを実現する仕組みの一例としては、前述したClaude CodeのAgent Teams機能(2026年2月時点ではまだ実験段階)がある。
Agent Teamsは、Claude Code上で複数のAIエージェントを並列に起動し、それぞれに異なるタスクを割り当てて協調させる仕組みである。
1つ1つの目標を与えたAIエージェントを複数並列的に実行させ、1つの大きな結果を実現させる。我々の仕事のあり方を根本から変えるキラーアプリになる可能性もあるだろう。
著者|
小川 誠 氏
ティアンドトラスト株式会社
代表取締役社長 CIO CTO
1989年、エス・イー・ラボ入社。その後、1993年にティアンドトラストに入社。システム/38 から IBM i まで、さまざまな開発プロジェクトに参加。またAS/400 、IBM i の機能拡張に伴い、他プラットフォームとの連携機能開発も手掛ける。IBM i 関連の多彩な教育コンテンツの作成や研修、セミナーなども担当。2021年6月から現職。
新・IBM i入門ガイド [コード生成編]
<基本用語>
01 生成AI&IBM i市場動向
02 生成AI
03 大規模言語モデルとマルチモーダルモデル
04 プロンプトとコンテキスト
05 AIエージェント
06ハルシネ―ションとセキュリティ
07ファインチューニングとRAG
08 APIとMCP
<基本ツール>
01 コード生成AIの思考プロセスと主要ツール
02 IBM i開発環境構築ロードマップ
03 Visual Studio Code
04 Code for IBM i
05 Git
06 Markdown
<開発ツール>
01 AIファースト開発環境
02 IBM Bob
03 対話型・CLI型AIツールの戦略的活用術
04 学びを止めないための次の一歩 リンク集
[i Magazine 2026 Spring掲載]







