米IBMは6月24日、IBM i環境向けに最適化したAI開発支援ソリューション「IBM Bob Premium Package for i」を発表した。「IBM Bob」を拡張するアドオン製品として提供され、RPG、COBOL、CL、DDS、SQL、QSYSなどIBM i特有の資産や開発ワークフローに対応する。
IBMによると、IBM iユーザー企業では現在、複数の構造的課題が深刻化している。特に問題視されているのが、ベテランRPG技術者への依存である。
多くの現場では、長年蓄積された業務知識がドキュメント化されず、個人の経験や暗黙知として残されている。さらに、熟練したRPG技術者の高齢化や人材不足が進む一方で、新任開発者が既存コードベースを理解して戦力化するまでに数カ月を要するケースも少なくない。
加えて、アプリケーション変更のたびに業務継続リスクが発生し、限られた人員でモダナイゼーション対応まで担わなければならない状況が続いている。結果として、技術的負債や刷新バックログが増大し、多くの企業で「現行運用を維持しながら近代化する」という難題に直面している。
IBMはこうした背景を踏まえ、AIを活用してIBM i特有の開発・保守業務を効率化する新たな支援基盤として、同製品を投入する。
今回発表された「IBM Bob Premium Package for i」は、IBM BobにIBM i専用の知識ベースとワークフローを追加するものとなる。
IBM Bob Premium Package for iでは、「IBM i Developer Mode」と「IBM i Database Mode」の2つの主要機能が提供される。
このうちIBM i Developer Modeは、RPGおよびCOBOLアプリケーションのモダナイゼーションや保守をAI支援によって効率化する機能群である。
特徴的なのは、IBM i環境へのネイティブ接続を実現している点である。開発者はBob上から直接、ソースコードの参照、編集、コンパイル、テストまで実行できる。
IBM i Developer Mode
IBM i Developer Modeの主な機能として、以下が挙げられている。
・RPGLEコードの生成・保守
・固定形式RPGからフリーフォームRPG(FFRPG)への変換
・OPMからILEへの移行支援
・ビジネスルール抽出
・技術ドキュメント生成
・ユニットテスト生成
・QSYSソースメンバー編集
・既存SDLCとの統合
とくに固定形式RPGからフリーフォームRPGへの変換支援は、多くのIBM iユーザー企業にとって重要なテーマである。近年のIBM i環境ではフリーフォーム化が推奨されているが、膨大な既存資産の移行が障壁となってきた。
AIによる自動変換やビジネスロジック抽出により、コードの可読性向上と属人化の解消が期待される。
IBM i Database Mode
もう1つの柱となる「IBM i Database Mode」は、IBM iデータベース環境の近代化と可視化を支援する。
IBM iでは、DDS(Data Description Specifications)ベースの設計が依然として多く残っており、SQL中心のモダンなデータベース設計への移行が課題となっている。
IBM i Database Modeでは、以下の機能を提供する。
・DDSからDDLへの変換アセスメント
・SQL最適化
・インデックス戦略提案
・データベース依存関係分析
・ER図(エンティティ・リレーションシップ図)生成
・ビジネスロジック解釈
・システムカタログナビゲーション
これにより、従来ブラックボックス化しやすかったIBM iアプリケーション間の依存関係を可視化し、変更影響分析を効率化できるという。
とくに、データベース変更前に下流システムへの影響を分析できる点は、ミッションクリティカル環境を抱える企業にとって大きな意味を持つ。
AIによるIBM iの活性化が進む可能性
IBM iユーザーの間では近年、レガシー・モダナイゼーションと既存資産の活用の両立が大きなテーマとなっている。
既存システムの全面刷新には莫大なコストとリスクが伴う一方、IBM i上の既存資産には数十年分の業務ノウハウが蓄積されている。そのため、多くの企業が段階的なモダナイゼーション戦略を選択し始めている。
IBMが今回提示したのは、AIを活用して既存資産を“理解可能な形”へ再構築し、次世代開発者へ継承していくアプローチである。
AIによるコード解析やドキュメント生成が実用段階へ進めば、これまでベテラン技術者に依存していた運用体制の改善につながる可能性がある。
生成AIの導入はコード開発領域で先行してきたが、今回のIBM Bob Premium Package for iは、基幹システム領域にも本格的なAI適用が広がり始めていることを示している。
[i Magazine・IS magazine]









