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「AI活用」をテーマに、IBM i World 2026開催 ~昨年を上回る来場者、IBM Bob V2やPremium Package for iの最新情報、ユーザー2社によるIBM Bob活用事例など多彩に展開

日本IBMは6月22日・23日、IBM iユーザー向けイベント「IBM i World 2026」を開催した。昨年を上回る約500名が来場し、会場は大きな盛り上がりを見せた。

イベントは8つのセッションと展示会で構成され、米IBMのスコット・フォースティ氏(IBM i DB2 for iビジネスアーキテクト)のほか、日本IBMから原寛世、茂木映典、玉川雄一、久野朗、山崎秀治氏らが登壇し、ミネベアミツミと三陽物産のIBM iユーザーからIBM Bobの活用事例の発表があった。本記事では、別記事としたミネベアミツミと山陽物産の講演以外の内容を紹介する。

開会の挨拶に立った原寛世氏(Power&Cloud事業部 理事 事業部長)は、「今回のIBM i WorldのテーマはAI活用」と説明。IBMでは、IBM iとIBM Bobの連携を重要戦略として位置づけ、AI時代に向けて製品・サービスの強化・拡充を進めていることを強調した。

さらに、既存資産を活かしながらAIやクラウドへ対応できる点をIBM iの強みとして挙げ、「投資効率を最大化できるプラットフォームがIBM i」とアピールした。

IBM Bob V2登場、IBM i開発をAIで刷新 
米IBMのスコット・フォースティ氏が講演 

原氏に続いて登壇したスコット・フォースティ氏は、イベント直後に一般提供が開始される「IBM Bob V2」と「IBM Bob Premium Package for i」が、IBM iの開発スタイルを大きく変えると説明した。

フォースティ氏は、「37年間IBMに在籍してきたが、今が最もエキサイティングな時代」と語り、IBM Bobは単なる“AIコパイロット”ではなく、「開発者にとっての新しい最高のパートナー」と位置づけた。Bobは、RPG、COBOL、SQL、DB2 for iなど IBM iの主要技術を理解し、レガシーコードの解析・改修、新規コードの生成、テストコードの作成、さらに品質保証までを支援できるという。

IBM Bobの特徴として強調されたのが、「IBM i環境そのものを理解しながら動作する」点である。Bobはライブラリー、IFS(統合ファイルシステム)、DB2カタログへアクセスし、システム内部構造を把握したうえで処理を行う。

 

フォースティ氏は、「今年前半の大半を、BobにDB2やSQL、IBM iを教えることに費やした」と述べ、すでにデータベースエンジニアのように振る舞えるレベルに到達していると説明した。

デモでは、RPGとDB2 for iを利用する開発シナリオを紹介。開発者がBobに「JSONを利用するSQLをRPGに組み込んでほしい」と指示すると、Bobは、IBM iのファイル構造や既存プログラムとの関連を解析し、自動的にソースコードを生成。IFSへの保存、コンパイル、テスト実行までを一連の流れとして処理した。フォースティ氏は、「私は1行もコードを書いていない」と強調した。

さらにBobは、単なるコード生成だけでなく、意味のあるテストケースまで自動生成し、その場で動作確認も実施したという。フォースティ氏は、「しかも最初の1回で成功した」と説明し、会場の注目を集めた。

別のデモでは、「/erd」コマンドによるER図の生成機能を紹介。BobがDB2カタログを解析し、物理ファイル間の依存関係やデータモデル構造を可視化する様子が披露された。

また、SQLレビュー機能も紹介された。BobにSQL文を渡すと、問題点を指摘するだけでなく、改善案や「なぜその書き方が望ましいのか」まで解説する。フォースティ氏は、「以前はSQLに関する問い合わせメールを大量にもらっていたが、今では『Bob に聞いてください』と言えるようになった」と語った。

IBM Bob Premium Package for iでは、IBM iとの統合をさらに強化。IBM i上のリソースやドキュメントを読み込み、より高速かつ高精度に回答を導き出せるという。内部では多数の“スキル”が動作しており、性能分析やセキュリティ支援なども行えると説明した。

ライセンス体系はSaaS型で、個人、グループ、エンタープライズ向けの複数プランを用意。IBM Bobは、Visual Studio Code for IBM iをベースに開発されており、Open VSX Marketplaceの拡張機能も利用可能だ。すでにIBM iソフトウェアベンダーによる Bob 向け拡張機能の提供も始まっているという。

 

ロードマップについても説明があり、四半期ごとに新機能を追加していく方針を示した。加えて、日本およびドイツへのデータセンター設置、第3四半期のオンプレミス版提供も予定している。クラウド利用が難しい企業向けへの対応も進める考えという。

また、「Bobalytics」と呼ばれる利用分析機能も紹介された。ユーザーごとの「Bobコイン」消費量を可視化する仕組みで、AI利用状況やコスト管理を支援するという。フォースティ氏は「Bob に良い質問をすることが重要になる」と説明した。

最後にフォースティ氏は、「ロードマップは鉛筆で書かれている」と述べ、顧客やアドバイザーとの対話を通じてBobを進化させていく考えを示した。すでに新たなコマンドやワークフロー開発も進行しているとしながら、「まだ話せない」と含みを持たせて講演を締めくくった(フォースティ氏へのインタビューを別記事で掲載)。

 

IBM i × AIエージェントで業務自動化を加速
茂木映典氏が、watsonx OrchestrateとIBM Bobの連携を紹介

日本IBM の茂木映典氏(Power&Cloud事業部 シニアテクニカルスペシャリスト)は、「IBM i×AIエージェント」が実現する業務自動化の将来像について講演した。AIエージェントをIBM i上の業務プロセスやDB2 for iのデータと連携させることで、「現場で本当に使える AI」を実現していく考えを示した。

茂木氏は、AIエージェントを「単なるQ&Aではなく、ユーザーの意図を理解し、自律的に判断・実行する“行動するAI”」と説明。複数のシステムや業務を横断的に連携し、人手で行っていた業務を自動化できる点が特徴だとした。

講演では、IBMのAIエージェントとして「watsonx Orchestrate」と「IBM Bob」を紹介。watsonx Orchestrateは業務アプリケーションやツールを横断的につなぐ「ハブ」として機能し、IBM BobはRPGやCOBOLの解析、コード生成、テスト作成などを支援する「AIプログラマー」として位置づけられた。

この両者をIBM iと接続する際に重要な役割を担うのが「MCPサーバー」である。AIエージェントはMCPサーバー経由でIBM iの業務アプリケーションやDB2 for iにアクセスする。さらに、そのMCP サーバー上で動作するツール開発もIBM Bobが支援する構成になっているという。

 

製造業向けのユースケースでは、品質管理や設備保全、生産計画などを例示。watsonx Orchestrateが品質記録や在庫情報、過去の対策履歴などを横断的に収集し、適切な是正アクションを提案する。一方、IBM Bobは、背後で動作するRPGプログラムや帳票を解析し、改善や改修を支援する役割を担う。

流通業向けでは、受注在庫照会や見積処理、仕入先評価などを紹介。複数システムに分散するデータを AI が統合し、営業担当者やヘルプデスクへ必要情報を提示するシナリオが示された。

茂木氏は、企業内でSalesforce、Slack、SAP、Box など多くのシステムが乱立している現状に触れ、「複数システムを毎回開くのが面倒」「使い方を忘れる」「同じ情報を何度も入力する」といった課題を指摘。その解決策として、watsonx Orchestrate を“総合窓口エージェント”として利用する構想を説明した。

デモでは、IBM iとwatsonx Orchestrateを連携させたサポート業務を紹介。ユーザーが「購入した製品のバッテリー交換方法を知りたい」と問い合わせると、AIがDB2 for iから購入履歴を取得し、さらに PDF やテキスト形式のマニュアルを読み込んで回答を生成した。具体的な購入日情報と交換手順をまとめて提示する様子が披露され、「IBM iは AI 時代における重要な知識資産を持つサーバーだ」と強調した。

後半では、IBM Bobの最新機能も紹介された。6月24日にリリースされる「IBM Bob 2.0」と「Premium Package for i」では、IBM i環境への直接接続を強化。ライブラリーやIFSをワークスペースとして扱いながら、ソース編集、コンパイル、エラー修正までを自動ワークフローとして実行できるという。

また、「IBM i Developer Mode」と「IBM i Database Mode」の2つのモードを搭載。Developer ModeではRPG 編集やコンパイル、エラー修正を支援し、Database Modeでは SQL 作成、レビュー、性能分析を支援する。

モダナイゼーションのデモでは、既存RPGプログラムをAPI化し、さらにWeb UIを自動生成する様子が紹介された。IBM BobがRPG ソースを解析し、YAJL(Yet Another JSON Library)を利用したAPI用コードを生成。Swagger定義を参照しながらWebアプリケーションを構築し、エラー発生時には自律的に修正を試みる場面も紹介された。

最後に茂木氏は、「IBM iは企業知識を蓄積した重要なサーバーであり、その価値をさらに拡張するのがAIエージェント」と説明。watsonx OrchestrateとIBM Bobの連携によって、IBM i の既存資産を活かしながら AI 活用を加速できる時代が始まっていると語った。

PowerVSで「爆速モダナイゼーション」を実現
玉川雄一氏、IBM BobとPowerVSによるAI駆動開発を紹介

日本IBMの玉川雄一氏(インフラストラクチャー・エンジニアリング事業部 Power&Cloudテクニカル・セールス)は、「IBM Bob × Power Virtual Server(PowerVS)」をテーマに講演し、IBM i向けクラウド基盤としてのPowerVSの価値を紹介した。AI 駆動開発を進める際に必要となる「素早い環境準備」や「柔軟な試行錯誤」を、クラウドによって実現できる点を強調した。

玉川氏は、「IBM Bobを試したいが、まずは既存環境に影響を与えず検証したいという声が多い」と説明。そのため、短期間で IBM i 区画を用意できる環境への需要が高まっているという。

一方、オンプレミス環境では、新しいIBM i区画の追加やバージョン違いの検証、負荷試験向けの一時的なリソース増強などに時間とコストがかかる。AI 駆動開発では試行錯誤が前提になるため、従来型インフラでは柔軟性に限界があると指摘した。

そこで活用を提案したのが「Power Virtual Server(PowerVS)」である。PowerVS は IBM が提供するクラウド型Power基盤で、PowerVMやVIOSなどオンプレミスと同じ Powerアーキテクチャを採用しているため、既存のIBM iアプリケーションをほぼそのままクラウドへ移行できるという。

また、クラウドならではの柔軟性も特徴だ。CPU、メモリ、ストレージを時間単位で利用できる従量課金制を採用し、0.25コア・4GBメモリ構成で「月6万円弱、時間換算で約78円」と紹介。「非常に始めやすい価格感」と説明した。

PowerVSはIaaS型サービスのため、利用者はOS以上のレイヤーだけを管理すればよく、ハードウェア運用は IBM が担当する。ポータルからセルフサービスでIBM i区画を作成でき、数十分で環境を利用可能になるという。

講演では、AI 駆動開発との親和性も強調された。IBM i 7.6や Power 11の検証、複数バージョンの並行テスト、新規業務だけのクラウドオフロードなど、短期間で柔軟に環境を切り替えられる点を利点として挙げた。

また、災害復旧(DR)用途としての活用も紹介された。PowerVS は平常時は低コストなオブジェクトストレージへバックアップを保存し、災害時のみクラウド側で IBM i 区画を立ち上げて復旧できる。東京・大阪リージョンをDRサイトとして利用可能で、ランサムウェア対策にも対応できるという。

後半では、IBM BobからIBM Cloudを自然言語で操作するデモも披露された。IBM Cloud CLIにMCP サーバー機能が追加されたことで、Bob がクラウド設定を自動確認・操作できるようになったという。

たとえば、「ファイアウォール設定に問題がないか確認して」「未使用ストレージを調べて」といった依頼を自然言語で実行可能で、Bobが裏側でCLIを操作しながら自動的に確認を行う。設定変更が不安な企業向けには、Read Only 権限での利用も可能だと説明した。

 

最後に玉川氏は、「PowerVS はオンプレミスに比べて圧倒的に柔軟で俊敏なIBM i基盤」と強調。AI 駆動開発のように短期間利用や試行錯誤が求められる時代において、「非常に最適な基盤になる」と述べ、講演を締めくくった。

IEFを「AI時代対応型ERP」として訴求
久野朗氏、WatsonxとIBM Bobを組み合わせたERP戦略を紹介

最後に登壇した日本IBMの久野朗氏(Power&Cloud事業部 IBM iカスタマーサクセスアドバイザー)は、IBM ERPフレームワーク(IEF)を「AI時代対応型ERP」として紹介した。Watsonx Orchestrate、IBM Bob、DB2 for iを組み合わせることで、「AIを業務へ実装するための実践基盤」を目指している点が特徴だという。

講演ではまず、日本企業の生成AI活用率の低さについて触れた。総務省データによると、日本企業で生成AIを業務利用している割合は約55%にとどまり、米国、中国、ドイツなどの90%超と比べて大きな差があるという。特に、顧客対応自動化やプログラミング支援などの領域では活用率がさらに低いと説明した。

久野氏は、その背景として「活用方法が分からない」「セキュリティ不安」「ランニングコスト不安」といった導入時の課題を指摘。「インターネットやスマートフォン導入時と同じで、慎重すぎると競争優位を逃す」と述べ、その解決策として IEF を提案した。

IEFは、販売管理、生産管理、経理、給与、ワークフローの5モジュールで構成される ERP で、特徴の1つが「ソースコードを全公開する ERP」である点だ。IBM の業務ノウハウを含むソースコードやドキュメントを顧客へ提供し、「ベストプラクティス+自社独自要件」で自由にカスタマイズできるという。

また、開発言語としてILE RPGを採用している点も強調された。久野氏は、「ILE RPG は後方互換性が高く、一度行ったカスタマイズが長期にわたって活かせる」と説明。インフラ更改時の移行負担を抑えられる点をIBM iの強みとして挙げた。

UI面では、Web GUIと5250画面(CUI)の両方を提供。大量入力が必要な現場では5250画面による高速入力のニーズが依然高いとし、「モダンUIだけを押し付けない ERP」であることをアピールした。

講演では、Watsonx OrchestrateとIBM Bobを活用したAI連携デモも披露された。Watsonx Orchestrate は顧客履歴、保守情報、製品マニュアルなどを横断参照し、問い合わせへ自動回答を行う。一方、IBM Bobは、ERPパッケージ改修をAIによって自動化する。

デモでは、「取引先コードを7桁から10桁へ変更する」という改修シナリオを紹介。ユーザーが自然言語で指示を出すと、Bobが依存関係の解析、バックアップ取得、RPG修正、差分比較、検証、最終報告書の作成までを自動実行した。途中経過をレポートとして提示し、人間がレビューしながら進められる点も特徴として紹介された。

さらに、DB2 for iのAI 時代向け機能についても説明があった。IEFは SQL、JDBC、ODBC、REST API、Kafka などに対応し、リアルタイムデータ連携を実現。加えて、地理空間分析機能を活用し、サプライチェーンやマーケティング用途への応用例も紹介された。

たとえば、物流では「資材の現在地」「倉庫との距離」「災害地域との位置関係」をリアルタイム分析できるほか、マーケティングでは「顧客が店舗半径1km圏内に入った際にプッシュ通知を送る」といった活用例が示された。

久野氏は、「他社プラットフォームではアプリ以前に基盤側の限界が課題になっているのではないか」と述べ、IBM iを AI 時代向けの高信頼・高セキュリティ基盤としてアピールした。

講演の最後には、IBM i統括の山崎秀治氏が登壇し、「IBM i World 2026」のオンデマンド配信や秋開催予定の「IBM i Advantage 2026」などを案内。また、開発者コミュニティ「IBM i Club」「Common USA」も紹介し、「IBM i経験者採用」だけでなく、「プログラミング経験者を IBM i 技術者として育成する」方向への転換を提案した。

講演全体を通じて、「IBM i は古い基幹システムではなく、AI時代に適した高信頼プラットフォームである」というメッセージが繰り返し強調された。

[i Magazine・IS magazine]

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