
釜屋化学工業株式会社
本社:奈良県大和郡山市
設立:1906年
資本金:2000万円
売上高:25億4400万円(2026年3月期)
従業員数:88名
事業内容:化粧品・食品・医薬品の容器の製造販売、日用雑貨品の製造販売、精密部品の製造販売
https://www.kamayakagaku.co.jp/
IBM iをクラウドへ
アプリケーション保守を外部ベンダーへ
釜屋化学工業の創業は明治39年。実に120年近くにわたって事業を拡大してきた容器メーカーである。
インジェクション成形品を筆頭に、化粧品・医薬品・食品の各業界に向けて、高機能性・高意匠性を実現する技術革新を重ねてきた。2016年には、化粧品・医薬品製造の万協製薬を中核とするバンキョウホールディングスの100%子会社になり、グループのシナジー効果発揮に貢献。2026年3月期決算も、増収増益を達成した。
また1989年には、タイに生産拠点としてタイカマヤ株式会社を設立。電気部品、自動車部品、化粧容器など多分野の製品を製造している。
米国とイスラエルによるイラン攻撃に端を発した石油化学製品の調達問題の影響を受けているものの、長きにわたる実績と卓越した技術力により、さらなる事業の拡大に取り組んでいる。
同社がIBM iの前身にあたるシステム/36を導入したのは、1986年に遡る。RPG Ⅲにより販売管理システムと生産管理システムを独自開発し、以降、改修を重ねながら運用を続けてきた。
IBM iは奈良本社と、本社機能を備える東京オフィスの2カ所に1台ずつ導入していたが、2016年に2台のIBM iをクラウドサービスへ移行。さらにアプリケーション保守は外部ベンダーに委託した。
そしてRPGに代わる開発言語としてLANSAを採用し、内製力・開発力を高めようとしている。その背景には、多くのIBM iユーザーが共通に抱える課題がある。後継者問題である。
IBM iの利用継続を前提に
LANSAで内製力を高める
同社では、以前は総務部総務課の5名のスタッフがシステム部門を兼任してきた。
しかしIBM iのインフラ周りからRPGアプリケーションまで、基幹システムの稼働環境を熟知してきた前・課長は2016年に引退。PCやWindowsアプリケーションの担当者は2022年に引退。システム業務を担ってきた社員は産休を経て現在、育児休暇中である。
このほか東京オフィスに導入したIBM iの管理を、他の業務と兼務しながら担っていた社員も退職した(この社員は総務部の所属ではない)。つまり基幹システムが動くIBM iの開発・保守・運用を担える社員は、ほぼいなくなったのである。
現在、総務部総務課でシステム業務を担う平等剛課長は2016年の入社。約10年にわたり同社に勤め、総務部で主に入力業務を中心に担当してきたが、IBM iやRPGの知識はない。
そして2025年4月、平等氏はついにシステム管理を担うたった1人の社員になった。同社ではこの状況を危惧し、継続的に正社員募集をかけているが、採用に苦慮している。
その後、2名の派遣社員が平等氏の下で働くことになる。しかしこの3名はいずれも、システムの専任ではない。平等氏の場合で言うと、管理系業務が業務の約半分を占め、総務系業務が約4割。つまりシステム関連の業務は、1割程度にすぎないわけだ。
IBM iを熟知する前・課長の引退が見えてきた時点で、同社ではこの先のシステム環境をどうするか検討した。一時はIBM iから撤退し、Windowsサーバーへ移行することも検討されたが、結局この案は途中で頓挫した。実現可能性が低いと判断されたのである。
そしてまず、IBM iの運用負荷を減らす狙いで採用されたのが、クラウドサービスへの移行である。採用を決めたのは、「NI+C Cloud Power」、提供ベンダーは当時の日本情報通信(NI+C)であった(同社は2025年12月にNTTインテグレーションへ社名変更。2024年からベル・データと協業し、新たなクラウドサービスとして「Power Cloud NEXT」を提供している)。
さらにRPGアプリケーションの保守は、ベル・データの保守サービスを利用することになった(前・課長が在籍していたころから、アプリケーション保守は日本情報通信に委託していたが、クラウドへの移行を機にベル・データへ委託先を変更した)。
次の課題は、基幹システムをどうするかである。同社では、IBM iの利用継続を前提にLANSAを採用する案と、IBM iから撤退してクラウドパッケージを利用する案を比較検討した。
結論から言うと、同社では日本情報通信の推薦もあり、IBM iと親和性の高いLANSAを採用することに決定した。
「クラウドを検討していたころ、IBM iからの撤退を考えたこともありましたが、結局、頓挫しました。今回も、クラウドパッケージはカスタマイズによる自社仕様の機能実現が難しいといった問題があり、最初からIBM iの継続を前提に考えようという雰囲気がありましたね。ただ新しい業務ニーズに対応していくためにRPGプログラムの量を増やしていけば、小さな改修や変更にも外部の手を借りることになり、結局は内製力が培われず、コストが増大していくことになります。これは避けたいと考えました。LANSAであれば、過去のプログラム資産を活かしつつ、新たなニーズにはLANSAを使って社内で対応していくことが可能です。2022年ごろから毎年、DXに沿った社内スローガンを打ち出していますが、LANSAにより内製力を高めることが、当社DXの狙いであるコスト削減や作業の効率性につながることになるでしょう」(平等氏)

LANSA開発の最初の一歩は
QUERYによるデータ抽出の置き換え
IBM iを前提にしたLANSAの採用およびクラウドパッケージの比較検討作業は、2024年4月から約半年間をかけて行われた。LANSAの採用決定と導入は同年10月である。
12月に平等氏が6日間のLANSA研修を受講するが、新入社員研修や締め処理対応などで予定どおり開発に着手できなかった。結局、第1次開発に着手できたのは2026年1~3月、第2次開発は2026年3~6月である。
第1次開発は、IBM iのQUERYを使って実行していたデータ抽出作業をLANSAに置き換えるもの。同社では毎日午後4時にIBM iのDBからQUERYと抽出用のCLを使って、ほぼ全データを抽出し、Windowsサーバーにアップロード。さらに独自プログラムで表形式やテキストデータに整え、全社員が参照できるようにしていた(図表1)。

マスターなどのファイルから必要なデータを取り出すために、何個もQUERY定義を重ね合わせていたが、初めの一歩として、このQUERY定義をLANSAで作ったわけである。
また第2次開発は、原料の配合比率をリアルタイムに参照する機能とした。同社では今まで、前述した午後4時に抽出したデータをもとに、原料の配合比率をExcelにより入力・計算・表示していた。
しかし午後4時以降に変更が生じた場合は、翌日の同時刻まで待たねばならず、またExcelへの誤入力が生じる可能性もある。そこでLANSAを使って、IBM iから原料の配合データをリアルタイムに算出する機能を実現したのである。
同社では新しいプログラムのアイデアが次々と寄せられている。
たとえば運用・物流・在庫管理の業務では、受注伝票や製造指図書、注文書などをIBM iへ再入力しているが、今後はQRコードを活用した新システムをLANSAで構想中である(図表2)。

今のところLANSAを利用できるのは平等氏だけであるが、今後は2名以上に増員し、IBM i専門の運用担当者でなくても、システムのデータを扱えるようにしたいとのこと。またLANSAによってデータ活用の幅を広げ、Excelやテキストエディタ以外にも、WebプリケーションやMS Access等で利用することも検討中である。
後継者問題の解決策とした今回の決断が、同社のデータ活用をレベルアップしていくことになりそうだ。
[i Magazine 2026 Summer掲載]







