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事例|C&Cビジネスサービス株式会社 ~RPA導入により年間事務作業1万2000時間の削減を目指す

Company Profile
本 社:神奈川県川崎市
創 立:2002年
資本金:1億円
従業員数:91名(2020年4月)
事業内容:各種スタッフ業務
(総務・経理・財務・庶務・人事・労務・福利厚生・教育研修・
営業関連サポート・事務処理・情報システムの開発運用など)
https://www.ccbs.co.jp/

 

 

 

バリュースタッフの育成を目指した
業務DX実践

 C&Cビジネスサービスは、JBグループ各社の共通業務を提供するシェアードサービスの会社として、2002年4月に発足した。現在は、グループの各事業会社に経理・財務、人事・総務、情報システム、業務サービス(業務支援、業務管理)という4つのサービスを提供している。

 そんな同社が「バリュースタッフ」の育成を目指し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を利用した業務改善に取り組み始めたのは2017年のことである。先頭に立って、自らプロジェクトを指揮する後藤浩代表取締役社長(注:2019年取材当時)は、「業務DX実践」の狙いを次のように語る。

「グループ各社の共通業務を集約的に受け持つシェアードサービスは、各社がコアビジネスに注力するうえで不可欠なサービスですが、その一方、業務改善の意識が生まれにくい面があります。スタッフは目の前の依頼された業務を忠実に行うことが優先され、業務プロセスを改善して効率を上げることには積極的に取り組めていませんでした。そのため、業務量の増加や新規業務の追加が発生すると、残業対応や人員の補充を検討せざるを得ません。しかしそれでは生産性の高い、高付加価値のサービスを提供していくことは望めません。そこで業務の自動化により生産性を高め、より付加価値の高い業務へシフトしていける人材を『バリュースタッフ』と定義し、その育成に向けた環境整備に着手しました」

 同社では、「業務の属人化」「継続的な業務改善の不在」「品質のバラツキ」の3つを現状の課題として掲げ、2017年から全社員が参加し、業務の自動化と改善に段階的に取り組むプロジェクトをスタートさせたのである。

 

5つのステップで
取り組みを推進  

 取り組みは、5つのステップで構成されている(図表1)

 

 ステップ1では、全社員の1人1人が自らの業務を見直し、見える化し、整理していく、いわゆる「業務の棚卸し」を実施する(ここでは「業務棚卸し表」を作成)。個々の業務を見える化し、全社的な視点で業務全体を整理する。

 ステップ2では、業務ごとに入り口(イン)と出口(アウト)、その間の業務プロセスを整理し、データがどこからどこへ、どう加工され、どのように使用されているかを整理する(ここでは「IN-OUT表」を作成)。目の前にある仕事を「流れ」として整理し、不要業務の廃止、重複の整理、担当者の再配置などを実行する。

 ステップ3では、1つの業務を「大」から「中」、さらに「小」単位へ細分化し、その詳細なプロセスを見直す。実際にはテレワークを視野に入れ、ペーパレス化やデータのデジタル化などで業務の改善を考える。

 ステップ4では、定型業務や工数の多い業務を選別し、自動化の対象を決定する(ここでは「自動化対象業務一覧」を作成)。

 そしてステップ5では、個々に予算化して、業務を順次自動化していく。

 ステップ1がスタートしたのは2017年4月。2018年1月末までに予算化を終了。そして同年4月からの2018年度を「業務DX実践の年」に位置づけ、上記の計画に基づいて業務の自動化を推進したのである(図表2)

 

 

 ここでは実践の手法を、「定型業務を自動化するRPA」「ヘルプデスクや問い合わせを自動化するチャットボット」「不要業務の廃止」「基幹システムの改修を伴う業務プロセスの見直し」「ポータルやWebによる情報共有」という5つの領域に分けている。

 具体的な業務効率化目標としては、2017年度の業務総工数15万7000時間に対し、2018年度はその約8%に相当する1万2000時間の削減を目指す(小分類業務総数486から132を抽出、年間4万2000時間要しているものを3万時間へ)。削減率は約28%。単純計算で言えば、1人当たり年間100時間の業務削減、もしくは7.5名分に相当する人員削減を実現することになる。

 

RPAツールとして
「WinActor」を採用

 自動化の柱となるのはチャットボット、Excelのマクロ化、そしてRPAである。とくにRPAの業務削減効果には、大きな期待が寄せられている。

 同社がRPAツールとして選択したのは、「WinActor」(NTTデータ)。日本語でのメニュー、Windowsとの親和性の高さ、さらにスモールスタートが可能で、情報システム担当者でなくてもロボットを作成できる操作の容易性などを評価して採用を決定した。2017年12月に導入し、2018年4月から本格的な利用がスタートしている。

 同社には経理・財務、人事・総務、情報システム、業務サービスという4つの機能がある。WinActorについては、情報システム部門が各部門への操作トレーニングを担当するが、基本的にロボット作成は各部門の担当者に任せ、情報システム部門は必要に応じてサポートしていく。現在は、各部門で合計9名のスタッフがロボットを作成しているが、今後はトレーニングの拡充を進め、最終的には全社員がWinActorの操作を可能にしていく方針である。

 図表3は、年間工数を削減した業務例である。たとえばRPA化した業務の一例には、適性試験結果集計がある(図表4)。これは手作業で実施していた採用時の試験結果の集計をRPAで自動化したもの。ロボットの実現により、それまで1件当たり7.3分を要していた作成時間が4.8分に短縮された。年間で見ると、合計104時間が68時間へと36時間分、約35%の業務削減を実現したことになる。

 

 

 自動化対象業務は社員個々の申請をラインマネージャーが集約して、実施の可否を判断する。そして月1回開催されるラインマネージャーミーティングで成果が報告され、情報システム部門が実施項目と進捗状況を管理する。このミーティングにはマネージャーだけでなく、社長をはじめと全役員が参加するという。

 現在は約30のロボットが稼働しており、その数は日々増えている。WinActorを操作できるユーザーが増えれば、ロボットの数も増え、部門ごとに作成したロボットをコンポーネントとして利用するなど、ロボット資産の共有も進んでいくことになりそうだ。

「業務の標準化、統合化、自動化、共通化が進めば、管理業務に関するグループ内での人員配置や異動もよりスムーズに進められるようになると期待しています」と語る後藤氏は、DXによる業務改善の最大の成果を次のように指摘する。

「社員1人1人が自らの業務を見つめ直し、その仕事にどんな意味や価値があるかを考えるようになりました。言われた仕事を、言われたとおりにするのではなく、何をどう変えれば効率化、高度化が図れるかに気づいて動けるようになる。それは個々人の仕事への満足度を高めると同時に、お客様の満足度向上にもつながるはずです」

 それこそが、同社の目指すバリュースタッフの姿であるようだ。

 

[IS magazine No.22(2019年1月)掲載)]

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