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IBM i 7.5 TR2、7.4 TR8発表、スティーブ・ウィル氏が強調する“目玉の”拡張・強化機能とは? ~製品発表レターと発表セミナーのまとめ

      

 

IBMは4月11日、IBM i 7.5 Technology Refresh(TR)2とIBM i 7.4 TR8を発表した。Db2 for i、IBM iサービス、IBM Navigator for i、IFS、アプリケーション開発など多岐にわたる多数の拡張がなされている。

また同日(米国時間)、IBM iアーキテクト兼CTOのスティーブ・ウィル氏(技術理事)は「IBM i 7.5 TR2、7.4 TR8および関連製品」と題するWebセミナーを行った。製品発表レターとウィル氏の講演から、今回発表のハイライトをまとめてみよう。

Db2 for i 

スティーブ・ウィル氏によると、今回のDb2 for iの拡張は「3つのカテゴリー」に分かれる。「データベース・エンジニアリング」と「SQL」、「IBM iサービス」の3つのカテゴリーである。

データベース・エンジニアリングでは、以下の拡張がハイライトとして紹介された。

・QSYS2.SYSFILES:論理ファイル、ビュー、インデックスの詳細を返すことが可能に
・QSYS2.RDB_ENTRY_INFO:WRKRDBDIREの代替として利用可能に
・RESTRICT ON DROP:プロシージャと関数の意図しないドロップを制御(IBM i 7.5 TR2のみ)
・SQE:拡張により、Power10でZLIBを利用してキャッシュ・クエリープランの圧縮が可能に

SQLの拡張では、次の4つが挙げられた。

・時間軸制御のための埋め込み機能の提供
・QSYS2 HTTP Function:バイナリベース(BLOB)のSQL RESTfulサービスの追加
・Db2 for i・Watson Geospatial Analytics(地理空間分析)へのスカラー関数の追加
・IBM i (SQL)サービスの追加・強化

4つ目のIBM iサービスは、さまざまな運用管理機能やアプリケーション連携機能を提供するもので、IBM i 7.2以降、精力的に拡張・強化が進むサービスである。この背景には、IBM iの運用・管理にSQLに通じた非IBM i技術者を投入したいというニーズがある。今回の拡張・強化では、「15~20種類の新しいIBM iサービスまたはDb2 for iサービス」(IBM i製品マネージャーのアリソン・バタリル氏)が追加された。そのうちウィル氏がハイライトとして挙げたのは、以下の6つの拡張である。

・監査ジャーナル:9つのヘルプ機能の追加
・DSPNETA(Display Network Attributes)コマンドによるネットワーク属性の詳細表示
・DNS Lookup Function:指定されたIPアドレスのホスト名を戻す
・ファイル情報とオブジェクトの保存 ・DSPSAVFの代替案
・SMAPP(システム管理アクセス・パス保護)の利用を容易する拡張
・PTF管理を容易にする機能の提供

なお、今回のIBM i 7.5 TR2、7.4 TR8は2023年5月5日に利用可能となるが、Db2 for i関連の拡張はDB PTF「SF99704」レベル25として提供され、2023年5月19日にリリースの予定。

RESTサポート

ウィル氏は、RESTサポートの拡張について、以下の3つを詳しく説明した。

・IWS(統合Webサービス・サーバー)のREST APIエンジンの拡張
・RPGプログラムからREST APIを呼び出す機能の拡張
・リモート・システム・エクスプローラーAPI (RSE API)の拡張

IWSは、RPG・COBOLなどのILEアプリケーションをWebサービスとして外部公開するためのプラットフォーム。そしてその外部公開のために用いられるのがREST API(SOAP API)で、APIのHTTPメソッドとしてPOST、PUT、GET、DELETEが使われてきたが、今回これにPATCHが追加された。また、従来は「入力」または「出力」をユーザーが選択する必要があったが、REST APIのサービスプログラムに対して「入力」「出力」のパラメータを指定できるようになった。

RPGプログラムからREST APIを呼び出す機能では、今回「バイナリ・ペイロード」がサポートされた。「RPG内で、APIを使ってタイムアウト値の指定などが可能になります」(ウィル氏)という。

またリモート・システム・エクスプローラーAPI (RSE API)の拡張により、「IBM iのシステム内で何が起きているかの情報を外部で得たり、外部から操作するためのRESTベースの新しいインターフェースが追加されました」と、ウィル氏は説明した。

アプリケーション開発&モダナイゼーション 

製品発表レターでは、アプリケーション開発に関して以下の製品を取り上げている。

・IBM iのVisual Studio Code関連
・Rational Developer for i(RDi)
・IBM i Merlin

このうちウィル氏が詳しく触れたのは、Visual Studio Code(以下、VS Code)関連の拡張である。「IBMとコミュニティの双方の協力によって行われた拡張」という。

・サーバーへのファイル・アップロードの高速化
・ILEプログラムを表示中のVS Code上でデバッグ機能の起動
・ユーザー認証なしでセキュアにIBM i環境に接続する機能
・アクション実行時に使用されるローカルプロジェクト内の.envファイルのサポート
・拡張機能者がIBM i APIを使用するためのTypeScript型定義による新しいAPI文書
・コンテンツアシスト、アウトラインビューなどVS Code内でCL言語をサポート

ウィル氏は、IBM iをターゲットとするVS Codeの拡張で「既存プログラムをモダナイゼーションできる層が大きく広がった」と言い、「IBM i Merlin用に開発したデバッガをVS Codeに適用したのは最近ですが、これはVS Code領域でこれから起きることの始まりにすぎません。VS Codeの拡張は、私たちの戦略的な未来の重要な部分なのです」と語った。

IBM Navigator for i 

Navigator for iでは、以下のような多数の機能が発表になった。

►Navigator for i全般の拡張
・カスタマイズされたテーブル・フィルタリング
・表示時のSQLのフォーマットと色分け
・QSYSOPRマルチシステム表示と応答

►ネットワーキング
・DNSサーバーの構成と管理のサポート
・新しいデバッグ・サーバーとサービスのサポート
・DDMサーバー構成
・ネットサーバー構成

►IFS(統合ファイルシステム)
・ファイルアップロード
・ファイルダウンロード
・ディレクトリノードを表示する新しいテーブルタブ
・オブジェクトプロパティの改善

►サーバー
・システム・ステータスを印刷できるプロパティ・ページ
・追加されたプロパティ

►ワーク管理
・開始前ジョブのサポート強化

►セキュリティ
・暗号サービスのサポート

►ジョブスケジューラ
・機能を追加

このうちウィル氏が「重要な拡張」として紹介したのは、テーブルのフィルタリング機能である。「フィルターが設定されていると、更新してもフィルター値が維持されます。従来は更新するとフィルターの設定が消えてしまい再度設定する必要があったので、多くのお客様が課題としていた事項が解決できました」(ウィル氏)

製品発表レターではこのほか、以下のライセンス・プログラム製品(LPP)の拡張・強化が発表されている。

IBM PowerHA SystemMirror for i 7.5 (5770-HAS) 

ポートフォリオの簡素化と敏捷性、適応性の向上を図る機能拡張を行った。また従来の最大2ノードから最大6ノードへレプリケーション機能を拡張した。

BRMS(IBM Backup, Recovery and Media Services for i) (5770-BR1) 

保存・復元やネットワーク機能などで新しい機能を追加した。

IBM Db2 Mirror for i (5770-DBM)  

さまざまな機能を拡張・強化し、ユーザー体験を全体的に向上させた。

IBM Rational Development Studio for i (5770-WDS) 

RPGおよびCOBOLのコンパイラーに新機能を追加した。%split、%Left、%rightによる文字列操作の強化、CRTBNDRPGとCRTRPG MODコマンドによる一時ファイルのレコード長の許可などがある。

セパレータを処理する%splitのオプションの拡張について、ウィル氏は以下の機能を紹介した。

・新オプション *ALLSEPを使用すると、すべてのセパレータが2つの部分文字列を区切るとみなされる。
 -余分なセパレータがある場合は空文字列を返す
 -文字列がセパレータで始まる場合、%SPLITは空の文字列で始まると見なす
 -文字列の末尾がセパレータの場合、%SPLITは空文字列で終わっていると見なす

IBM i Access Client Solutions (ACS 1.1.9.2) 

システム管理を向上させるための多数の強化・拡張が行われた。ウィル氏は以下の拡張リストを紹介し、「今すぐ使える便利な機能」として、ステートメント変数のプロンプト表示を解説した。

・ステートメント変数に対するプロンプト表示
・リッチテキスト・コピーへの対応
・動的ハイパーリンク
・上書きカーソルが可能に
・行検索ブロック・サイズの設定
・JDBC構成時のデフォルトのSQLスキーマおよびライブラリ・リストの変更
・暗黙のうちにデバッグを開始しないようする設定機能

ステートメント変数のプロンプト表示は、SQLスクリプトの実行中にプロンプトを表示させ取得できるようにするもので、「従来のようにSQLスクリプトにすべてを書き込んでおく必要はなく、正しい情報とパラメータを知ってさえいれば、必要な時にその都度、プロンプト画面から直接入力することができるようになりました」と、ウィル氏は説明した。

IBM i Merlin 

MerlinのIDEにCLが追加されるなどの機能拡張が行われた。

8GBテープ・バックアップ製品への直接接続  

Power10上のIBM iからファイバー・チャネル経由で8GBテープ・バックアップ製品への直接接続が可能になった。コストと手間のかかるSANスイッチなどは不要。

・製品発表レター「IBM adds new capabilities and enhancements with IBM i 7.5 Technology Refresh 2」(英語)
https://www.ibm.com/common/ssi/ShowDoc.wss?docURL=/common/ssi/rep_ca/3/760/ENUSJP23-0093/index.html
・製品発表レター「IBM extends new capabilities and enhancements with IBM i 7.4 Technology Refresh 8」(英語)
https://www.ibm.com/common/ssi/ShowDoc.wss?docURL=/common/ssi/rep_ca/4/760/ENUSJP23-0094/index.html
・IBM Support:IBM i 7.5 -Enhancements timed with Technology Refresh 2 (TR2)(英語)
https://www.ibm.com/support/pages/ibm-i-75-tr2-enhancements

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