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IBM、z16を発表|IBMのAI・ハイブリッドクラウド戦略を体現するメインフレーム ~トランザクション処理中にリアルタイムAI推論処理をセキュアに実現

日本IBMは4月6日、メインフレームの新製品「IBM z16」を発表した。2017年7月のz14、2019年9月のz15に続く2年半ぶりの発表で、7nmのTelumプロセッサの新規採用によりスペックおよび処理性能を向上させたほか、トランザクション処理中にリアルタイムでAI推論処理が行える機構や、業界初となるNIST(米国立標準技術研究所)仕様準拠の耐量子暗号システムを搭載した。

IBMではz16の特徴として、次の3点を強調している。

・意思決定の速度を高めるAI推論と自動化
・サイバー攻撃に対応できるセキュアなシステム
・ハイブリッド・アプローチによるモダナイゼーションの推進

意思決定の速度を高めるAI推論と自動化

z16は今回、プロセッサコアに「オンチップAIアクセラレータ(AIU)」を標準で搭載した。AIUは、AI推論処理が1ミリ秒という低レイテンシーが特徴で、AIUを増やしても(最大32個搭載可能)レイテンシーが変わらないという特質を備える。そのためトランザクションの処理中にリアルタイムでAI推論処理が可能である。

日本IBM技術理事の川口一政氏は、「リアルタイムAI推論処理を銀行の基幹系業務に取り込むと不正な取引をリアルタイムに検知でき、年間1000億円単位の不正コストを未然に防げる。リアルタイムAI推論処理はすべての業種のすべてのお客様に適用可能で、基幹業務に変革をもたらす」と説明した。

サイバー攻撃に対応できるセキュアなシステム

IBMのメインフレームではこれまで、すべてのアプリケーション・データを暗号化する「全方位型暗号化」や、データを分散サーバーにコピーする際の暗号化技術「Hyper Protect Data Controller」を搭載してきた。しかし川口氏は、「現在の暗号化技術は将来の量子コンピュータによって破られるリスクがある」と言い、「サイバー犯罪者は将来、量子コンピュータを用いてデータを復号化するために、今データを収集している」と語った。

IBMが今回、z16に搭載した耐量子暗号システムは、それに対抗し得る暗号化機能を提供する。「対応年数の長い年金データなどは、今、耐量子暗号システムによって対応すべきリスク」と、川口氏は話す。

ハイブリッド・アプローチによるモダナイゼーションの推進

IBMはz16を「オンプレミスとクラウド、既存業務と新しいデジタルサービスをシームレスに統合するIT基盤。そのアプローチによりモダナイゼーションの推進が可能になる」と説明する。その事実として、テクノロジー事業本部執行役員の渡辺卓也氏(Z事業担当)はIBMメインフレームのMIPS(出荷処理能力)の出荷推移を示し、「IBMメインフレームはLinuxやオープンソースの実行環境として再評価されている」と語った。下図の水色部分(Standard MIPS)はz/OS環境のMIPS、紺色部分(Specialty MIPS)はLinux環境のMIPSで、オープン環境がプロプラエタリ環境を大きく上回っている。

またハイブリッド・アプローチのそのほかの施策として、zベースのIBM Cloudサービスの拡充やソフトウェア・バンドル製品の提供により、開発生産性をさらに向上させる、と渡辺氏は説明した。

z16の主な仕様と新機能は、次の図のとおり。

プロセッサを14nm(z15)から7nmへと革新し、キャッシュ容量をz15の1.5倍、信頼性の高いRAIM(Redundant Array of Independent Memory)メモリを最大40TBへ拡大し、ドロワーあたりのメモリ量をz15の25%増とした点などに、「ミッションクリティカルなデータが存在する場所でAI推論処理をリアルタイムに実現する」z16の特徴が端的に示されている。

IBMメインフレームは、IBMのインフラストラクチャ分野の売上高の約20%(2021年の売上高は推定で約88億ドル)を占めており、IBMの業績に大きく貢献している。z16の成功が、AIとハイブリッドクラウド戦略を推進するIBMの命運を握ることになりそうである。

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