事例|日本毛織株式会社 ~業務フローを可視化して属人化を排除、スキルの標準化・共有化を推進

COMPANY PROFILE
本 社:大阪府大阪市
設 立:1896年
資本金:64億6500万円
売上高:1105億3800万円(連結、2018年11月期)
従業員数:5077名(連結、2018年11月)
事業内容:衣料繊維事業、産業機材事業、人とみらい開発事業、生活流通事業など
http://www.nikke.co.jp/

 日本毛織は1896(明治29)年の創業以来、ウールの総合メーカーとして事業を拡大してきた。現在は衣料繊維事業、産業機材事業、人とみらい開発事業、生活流通事業と4つの事業領域を柱に、ニッケグループとして多角的な事業を展開している。2016年に創立120周年を迎え、次の10年間にニッケグループの目指す方向性、企業像、経営戦略を再構築すべく、中長期ビジョン「リニューアル・ニッケ130ビジョン」を策定。中長期的な企業価値の向上を目指している。

 

 

 

業務フローの可視化に向けて
棚卸しツールを導入

 日本毛織で情報システム部門の役割を担うデジタル推進室は2019年2月、それまでの所属であった衣料繊維事業本部から移動し、経営戦略センターの傘下に再編された。この組織変更の背景には、グループの「祖業」であり、長い歴史のある衣料繊維事業のシステムをメインに支える役割から、同社およびグループ全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)実現に向けた推進役とする経営側の狙いがある。

 50数社で構成される同グループでは、M&Aの歴史を反映し、事業部門やグループ会社ごとの裁量で多種多様なシステムが稼働している。たとえば衣料繊維事業本部では、販売・購買管理や生産管理などの基幹システムをIBMのメインフレーム上で運用している。

 デジタル推進室が衣料繊維事業部の基幹システムを対象に、要件定義からシステム設計までをリポジトリで一元管理する上流工程支援ツール「Xupper(クロスアッパー)」(JBCC)を導入したのは2000年に遡る。導入の目的は、長期にわたる運用で顕在化していたシステムのブラックボックス化、そしてスキルの属人化に対処するためであった。

 過去の分散化時代の名残なのか、同社では工場ごとに独自の生産管理・販売管理システムを構築してきた。本社、印南工場、一宮工場(現在は一宮事業所)にメインフレームを導入し、COBOL、PL/I、RPGⅡ、簡易言語などさまざまな開発言語を使って、独自の生産要件を反映した異なるシステムを運用していた。

 内製主義を掲げ、日常的なアプリケーション保守は社内のシステム人員で対応する。しかし長年のシステム改修の結果、正確なドキュメント類は保管されておらず、担当者のみがシステム内容を把握するなど属人化も進んでいた。

「開発・運用スキルを標準化・共有化するとともに、各工場のシステムをそのまま本社側のメインフレーム区画に移行する計画もあり、現在の業務フローを可視化したいというニーズがありました。現場部門の業務の在り方、さらに言えば、それらの機能の実装に至った理由や考え方のプロセスまで可視化したいと考えたのです」と、導入の経緯を知る三好和彦氏(経営戦略センター デジタル推進室 ビジネス革新グループ)は語る。

 当時はまだ上流工程で業務フローを可視化するツールはあまり提供されておらず、いろいろと探して出会ったのが、Xupperであった。Xupperであれば、単なるお絵描きツールと違って、設計情報の全データをリポジトリで管理するので、業務フローの変更やデータ項目の修正に際しても、関連する画面や帳票、テーブルなどの定義が同期され、記述の標準化や整合性を保てる点、さらに検索機能が充実している点を評価した。

 

DX実現に向けたシステム構想でも
Xupperの利用を継続

 2000年当初は業務フローの可視化が狙いだったので、「Xupper BFD Plus」を導入した。その後、利用目的が拡大するに従って、2003年にDBや画面の設計をサポートする「Xupper Standard」、2009年には各工場のリポジトリ統合を可能にする「Xupper Advanced」と、上位エディションへ移行している。

 デジタル推進室には現在、13名の技術者が所属する。インフラ担当者が3〜4名、それ以外は開発者である。Xupperを利用するのは、このうちメインフレーム専任の4名の開発者である。

 Xupperは、日常的な開発業務のプロセスに組み込まれている。大小取り混ぜて、メインフレーム関連の開発案件は年間70〜80件ほど発生するが、画面や帳票の部分的な修正などを除き、ジョブフローに変更が生じるような案件では、必ずXupperを使用する。

 たとえば現場部門からデジタル推進室へ開発を依頼する場合、システム開発・保守依頼書に数行の依頼内容を記して起票する。承認されると、デジタル推進室の担当者が現場部門に赴き、ヒアリングして、依頼内容を詳細に確認する。そして担当者はXupperを使って、その業務フローを作成し、現場部門が確認して相違点を指摘する。

 この作業を何度も繰り返し、相互の認識を刷り合わせ、要求・要件を矛盾なく整理していく。要件確定後は業務フロー図(図表1)、エンティティ関連図(図表2)、ジョブフロー、ビジネスルールなどをドキュメントとして管理する。エンティティ関連図からテーブル定義を抜き出して、後工程の開発作業で利用する場合もある。

 

[図表1]下=変更前

[図表1]下=変更後

 

[図表2]エンティティ部

 

「Xupperの最大のメリットは、現場部門とのコミュニケーションが円滑に進められることです。可視化した業務フローを目の前にして会話すると、確実に意思の疎通が進み、抜けや漏れなく要件が整理できると実感しています」(三好氏)

 同社では現在、基幹システムの再構築プロジェクトが進んでいる。

「開発人員の高齢化や最新技術の活用、新規業務要件への対応、今後のDXの実現などを踏まえ、メインフレーム主体の運用を脱し、新たな段階へ進もうと考えています」と語るのは、経営戦略センター デジタル推進室の寺木一彦室長である。新たなシステム基盤の構想として、ERPや業務パッケージ製品の活用、COBOLなどのストレートコンバージョン、全面的な新規開発など、衣料繊維事業本部とともに全方位で今後の方向性と実装手段を探っている段階で、まもなくその結論が出る。

「最近は次期システムの構想策定に向けて、現状の業務フローをあらためて確認すべく、今まで以上にXupperを利用するシーンが増えています。この先、どのようなシステム基盤を実現することになっても、当社が大切にしてきた内製主義のマインドは継承していきたいですし、自社の独自要件を色濃く反映するには、何らかのカスタマイズや開発作業で対応していくことになるでしょう。そうした開発領域が社内に残る限り、Xupperの運用は継続するし、次期システムへの移行時にも、エンティティ関連図のデータ項目といった情報を活かしていけると考えています」(寺木氏)

 

寺木 一彦氏 経営戦略センター デジタル推進室 室長
三好 和彦氏 経営戦略センター デジタル推進室 ビジネス革新グループ

[IS magazine No.25(2019年10月)掲載]

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