MENU

事例|三井食品工業株式会社 ~システムの現状把握からリプレース時の棚卸しまで 「Trinity」のドキュメントを活用

COMPANY PROFILE

本 社:愛知県一宮市
創 業:1926年
資本金:1200万円
売上高:31億円(2018年度)
従業員数:99名(2019年9月)
事業内容:漬物、惣菜の製造・販売
http://www.mitsuishokuhin.co.jp

 

担当者不在のまま
IBM iの運用を引き継ぐ

 三井食品工業は2002年、それまで利用していた国産オフコンからIBM iへ移行し、販売管理を核とする基幹システムをRPGで再構築した。開発は外部ベンダーへ委託したものの、当時はまだ社内でアプリケーション保守を担当する人員が十分にいて、いわゆる内製主義でシステム開発・運用を継続する体制が整っていたという。

 しかしその後、年数が経つにつれてシステム人員は少しずつ縮小され、ここ数年は担当者1名でシステム運用を担っていた。アプリケーション開発・保守はすべて外部ベンダーに委託する体制であったが、担当者は同社でのシステム経験が長く、プログラムの構造などはおおよそ頭に入っていたという。しかしこの担当者が病気で休職したことで、約1年近くの間、システム担当者不在の状態が続くことになった。

 経営側はこの事態を解決すべく、IT経験のある人材を募集し、現在総務部でシステムを担当する青山幸成氏が入社した。2年以上前に遡る、2017年5月のことである。

 青山氏は、ITベンダーでのSE経験を経て、ユーザー企業のシステム部門で社内SEを務めたのちに、同社に入社した。入社までの直近5年ほどは、プロジェクトマネジメント中心の業務に携わっていたという。Javaをはじめとするオープン系技術には詳しいが、IBM iの知識はまったくなく、もちろんRPGでの開発経験もない。前任者から引き継ぎを受けられない特殊な状況で、青山氏は1人、まったく未知のサーバー運用を担当することになったのである。

総務部 青山 幸成氏


「Trinity」を使って
システムの現状を把握する

 着任してすぐに青山氏は、システムの現状把握に動き出した。まず現在のシステム状況と運用フローを明確化し、経営側や現場部門からの要求・要望を整理し、優先順位をつけて上長に報告し、着手の順序を決める。運用面を重視した「守りのIT」と、経営やビジネスの拡大につながる「攻めのIT」の両面で、同社に必要なIT施策は何かを考え始めたのである。とは言え、初めて見るシステムの把握には時間がかかり、もどかしい思いを抱えながらの作業であったことは容易に想像がつく。

 そんなとき、青山氏は同社がIBM i用の設計書自動作成&システム調査ツールである「Trinity」(Zero Divide)を導入していることを知った。

 Trinityは、IBM iのメンバーソースから設計書を自動作成するWindowsアプリケーションである。設計書自動作成ソフトウェアとして定評のあった「ドキュメントマスター」の後継製品で、設計書の作成以外にもシステムの分析や検索機能、設計書の変換機能などが用意されており、システムのドキュメント化だけでなく、日常的な開発支援や運用業務などに幅広く活用できる。

 同社では5~6年ほど前に、システムのブラックボックス化を避け、ドキュメントを正確に残す狙いでドキュメントマスターを導入し、のちにTrinityへ移行していた。

「Trinityというツールがあるとはわかったものの、機能の利用方法や出力図の活用方法などがよくわからず、すぐに使いこなすことはできませんでした。ちょうどそのころ、Trinityのバージョンアップがあったので、開発元のZero Divideからサポートに来てもらい、操作方法や利用方法を教わりました。その後もいろいろな質問に電話やメールできめ細かく回答してもらうことで、Trinityでドキュメントを最新化する作業などにも着手でき、システムの全体像を少しずつ把握できるようになりました。Trinityの助けがなければ、現状把握にもっと時間がかかったと思います」と、青山氏は当時を振り返る。

 入社から数カ月経ったころに、休職中であった担当者も復帰し、具体的な案件に着手する準備が整った。経営側から寄せられていた最初の課題は、データ分析環境の改善である。

 当時導入していたBIツールが期待どおりに利用できていなかったため、別のツールに変更するなどの作業を行い、2018年4月から新しいデータ分析環境がスタートしている。

 ちなみにIBM iに対する青山氏の最初の感想は、「DB周りのパフォーマンスが極めて速いことに驚きました。オープン系サーバーで同じパフォーマンスを出そうとしたら、格段に重装備のシステム環境が必要になると思います」とのことである。

Power Systemsの移行時に
「Trinity」で資産の棚卸し

 その後、突発的な案件にいろいろと対処しながら毎日を忙しく過ごしていた2018年秋、利用していたPower 520のサポートが終了するとの通知がもたらされた。同社にとっては、突然の知らせである。

「私の入社する以前には、このままPower SystemsとIBM iを継続利用するのか、それとも別サーバーにリプレースするのかという議論があったと聞いています」と語る青山氏は、さらに次のように続ける。

 「サポート終了は、別サーバーへのリプレースを考えるよい機会になるとの声もありましたが、なんと言っても突然のことで、検討に費やせる時間が足りませんでした。その時点から再構築を準備するには、工数面でもコスト面でも、さらに本当に自社に必要なシステムを実現できるのかを考えても、リスクが大きすぎると判断しました。そこで今回は、新しいPower Systemsにリプレースすることを決めました。ただしリプレースに際しては、現在の資産を棚卸しし、シンプルに整理された状態で移行するのが望ましいと考え、あらためてTrinityを使って、プログラム資産の分析に着手しました」(青山氏)

 分析の結果、ライブラリベースおよびストレージベースで、それぞれ約40%のプログラムが不要であると判断された。これらを整理した状態で、2019年3月に、POWER9プロセッサを搭載したS914へのリプレースを完了した。

「今はせっかくリプレースしたので、このまま今ある資産を最大限有効に活用していこうとの意見が優勢です。ただし次のハードウェア更改時までに、今ある資産のどれをIBM i上で運用し続け、新システムや追加システムはどのような環境で実現していくか、つまり何を残して、何を変えるかなど、時間をかけて考えていく必要があると思っています」(青山氏)

流通BMSへの対応に
出力したドキュメントを活用

 青山氏がTrinityの機能でよく利用するのは、まず「オブジェクト棚卸資料」である(図表1)。最終使用などのオブジェクト情報を一覧形式で確認できるので、大まかな判断に活用している。

図表1 オブジェクト棚卸しの結果

 

 また「Excel設計書作成機能」「プログラム関連図」(図表2)「プログラムNET一覧表」(図表3)や、「使用ファイル一覧表」「CRUD図」「ファイル使用経路検索」などの機能もよく利用している。

図表2 プログラム関連図の画面

 

図表3 Excel設計書(プログラムNET一覧表)の画面

 

 さらにRPGでの開発経験がない青山氏にとっては、RPGソースの日本語化機能も便利に使えるようだ。ソースを日本語化、つまり日本語で補足してくれるので、プログラムの意味を理解しやすくなるという。

 外部ベンダーに開発を依頼する場合は、あらかじめ設計書やプログラム関連図などを調べ、そのドキュメントをベースにやり取りするようにしている。

 今、Trinityを使いながら打ち合わせを進めているのが、流通BMSへの対応である。NTTが2024年初頭をもってISDNのサービスを終了するとを発表して以降、JCA手順など従来型EDIからの移行が急がれている。同社では一部にJCA手順での受発注が残るものの、多くがWeb EDIへ移行している。しかしある大手の取引先が流通BMSへの移行を決めたため、これに対応するとともに、他の受発注も流通BMSへ共通化するための作業を進めることになった。

 基幹システム側にもプログラム改修が生じるため、Trinityで出力したドキュメントを確認しながら、外部ベンダーと打ち合わせている。稼動目標は、同社の新しい決算期が始まる2020年7月である。

 流通BMS以外にも、同社では今後、Trinityで出力したドキュメントをさまざまな打ち合わせで活用することになりそうだ。

 

[i Magazine 2019 Winter掲載]

 

 

新着