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APIの活用でIBM iの価値をさらに高める ~コンソーシアム代表・副代表を務める柿澤浩介氏・藤井星多氏に聞く

2021年12月に「APIコンソーシアム -IBM i」がベンダー7社により結成された。今後のIBM iシステムにはAPIの活用が欠かせないとの考えの下、セミナーや勉強会を開催し、情報の共有や発信を行い、エコシステムの拡大も目指すという。代表を務める三和コムテックの柿澤浩介氏、副代表のオムニサイエンス 藤井星多氏に話をうかがった。

柿澤 浩介氏
三和コムテック株式会社 代表取締役社長
APIコンソーシアム -IBM i 代表

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藤井 星多氏
株式会社オムニサイエンス 代表取締役社長 CEO
APIコンソーシアム -IBM i 副代表

2社だけでは活動に限界
エコシステムの拡大もテーマ

i Mag コンソーシアム設立のきっかけはどのようなことだったのですか。

柿澤 私が昨年(2021年)7月に社長に就任したときに、早々にご連絡をいただいてお会いしたのがきっかけでした。そのときにIBM i市場の動向などいろいろな話を交わしましたが、一番盛り上がったのがAPIでした。

柿澤 浩介氏

 

藤井 弊社でもIBM i向けAPI製品(API-Bridge)の開発を進めていて、ちょうどプロトタイプが完成した頃だったのですね。

柿澤 そうなると弊社のARCAD APIとぶつかるね、という話になったのですが、しかし両社の製品が競合するとしてもそれはずっと後のことで、まずは市場の立ち上げのほうが先だろうという話で意気投合しました。

藤井 APIはIBM iのお客様の間ではまだ認知されていませんし、マーケットを広げないことにはぶつかりようもありません。そう思う前提として、IBM iのお客様や市場についての状況認識で一致するものがたくさんありました。

藤井 星多氏

 

柿澤 IBM iのお客様の状況を見ると、システム化に前向きな企業とそうでない企業に2分されるように思えます。そうでない企業は、今はシステムを塩漬けにしていますが、いずれモダナイゼーションしたり事業環境の変化にあわせた改築・再構築が必要になります。そうしたときに、APIが課題解決の糸口になるのです。というのも、現行システムは塩漬けのままでよく、APIが解決策を引っ張ってくる“つなぎ役”になるからです。また、システム化に積極的に取り組んでおられるお客様にとっても、APIはシステムを柔軟かつ素早く構築する特効薬になります。

藤井 ただし、今IBM iのお客様にAPIをご説明しても、ピンとこない方が大半だろうと思います。それは、これまでのシステムの作り方がAPIとは無縁だったからで、その背景にはAPIを作成・管理するIBM i向けのツールがほとんどなく、さらにAPIを独自に開発するには新たなスキルや知見が必要だったという事情があるからですね。

i Mag 昨年7月にお会いになって12月にコンソーシアムの設立です。その間に、どのような話をしたのですか。

柿澤 市場の見方やAPIにどのように取り組むかについて話を深めました。我々のミッションは、IBM iとその周縁の技術を使ってお客様のビジネスの成長をご支援するということですが、その有望な手段としてAPIがあります。それをどう活用しどのように普及させるかについて突っ込んだ議論をしました。

とはいえ、私たち2社だけでやっても限界があるのですね。APIはシステムとシステム、システムとサービス、サービスとサービスをつなぐものですから、システム/サービス/技術を提供する多様なベンダーとの幅広い連携があってこそ、APIの価値が高まります。つまりエコシステムが必要という点で、私と藤井さんの意見は完全に一致しました。

i Mag そしてコンソーシアムの設立に7社が参加しましたが、どのような会社が集まったのですか。

柿澤 アスタリストは、「ActRecipe」というSaaSやFinTechのデータ統合を実現するAPIサービスを提供しています。私がとくに注目しているのは、ActRecipeがガバナンスを考慮したAPI連携を実現する点で、IBM iのお客様はガバナンスやコンプライアンスを重視されますから、アスタリストは重要な技術・サービスを提供してくれると期待しています。

Internnectは開発会社で、東京のほか、中国の大連・吉林、バンコック、シンガポールにも拠点を置き、プロジェクトごとに最良の人材を集める「ハリウッド型」と呼ぶ業務スタイルで事業を展開しています。代表の岡本(龍一)さんは若くて非常にユニークな発想をもっている方なので、IBM iの世界に新風を吹き込んでくれると思っています。

藤井 イグアスはIBM iのVAD(付加価値ディストリビュー)としてNo.1の会社ですが、Power Virtual Serverにも積極的で、APIを利用する支援サービスにも注力しています。

中部システムは、IBM iのPHPやオープンソース関連の技術で定評のあるSIerです。代表の牛田(吉樹)さんはブロガーとしても著名で、i Magazineサイトにもコラムを寄稿していますね。

ターボーは、ゼネラル・ビジネス・サービスで執行役員を務めておられた黒岩(城)さんが昨年設立した会社で、IBM iの基幹系・業務系システムの構築・運用経験が豊富なスペシャリストが揃っています。

図表1 「APIコンソーシアム – IBM i」の組織と活動テーマ

セミナーを3〜4月頃に開催
ユースケースを収集し情報共有

i Mag 特徴のある会社が集まっている印象ですが、2022年はどのような活動を予定していますか。

柿澤 最初にコンソーシアムのWebサイトを立ち上げる予定です。目下準備中で近々にアナウンスできるかと思います。そして3〜4月頃にセミナーを開催し、海外のIBM iのAPI事情やAPIの技術、製品の勘どころなどをご紹介する予定でいます。

藤井 それとユースケースのご紹介ですね。ユースケースを増やすこととメンバー間の情報共有は初年度のテーマで、力を入れるつもりです。机上の空論ではない、実際の製品を使ったユースケースですね。IBM iのお客様に「APIはこういうところに使うのか」と、納得していただけるケースを増やしたいと思っています。

柿澤 もう1つはメンバーの拡充です。コンソーシアムは、組織の意思決定に関わる「コンソーシアムメンバー」と一般の「コミュニティメンバー」に分けていますが、それぞれでメンバーを募集していきます。コンソーシアムメンバーのほうは「2社以上の他薦が必要」といった規約を設けていますが、ご関心のある会社はどんどん名乗りをあげていただきたいと思っています。

i Mag 両社のAPIビジネスはどのような状況ですか。

柿澤 私どものARCAD APIはテストトライアル中のお客様があり、引き合いも増えています。ARCAD APIは5年ほど前のリリースですが、最近になって急に火がついた印象です。お問い合わせいただくお客様は、APIをどのように使うか、明確なイメージをお持ちになっていると感じています。

藤井 弊社は昨年(2021年)10月にAPI-Bridgeをリリースして、つい最近、初めてセミナーを開催しました。当日の午前中にご案内メールを配信したのですが、それにもかかわらず50人もの参加があり、反響の大きさに驚きました。参加理由を尋ねたアンケートでは、「どんなことができるのか情報収集したかった」という回答が多く、中には「もう少し具体例があるとよかった」というコメントもありました。やはり、ユースケースが必要なのですね。

i Mag コンソーシアムの活動を通して、IBM i市場にどのように関わっていきますか。

柿澤 最近よく耳にするのは、IBM iを離れて別のプラットフォームに移行したけれども、それがうまくいかずにIBM iに戻ってきたというお客様の話です。IBM iをいったん離れたお客様は、そのときはベストの選択をしたのでしょうが、IBM iのよさや可能性を知るベンダーからすると、IBM iを離れる前に何かできなかったのだろうかと思えてなりません。弊社でもモダナイゼーション案件が増えているので、モダナイゼーションとAPIという両方の領域を追求していく必要があると感じています。つまり、時には融合して、時には別々に、ですね。APIコンソーシアムでは、弊社で得た知見を積極的に共有していくつもりです。

藤井 先ほどIBM iのクラウド化に触れましたが、IBM iの基盤をクラウドへ移行すると、リソースの配分についての考え方が大きく変わるだろうと見ています。従来はオンプレミスのIBM i上でやり繰りして、オープン系の技術やオープンソースなどもPASEを立てて実装していました。それがクラウドになると、オープン系の技術やオープンソースはIBM iのすぐ近くにあり、いつでも使える状態になっています。するとコスト高になるPASEをあえて設ける必要はまったくなくなり、むしろ積極的にオープン系技術やオープンソースを使っていこうとなるはずです。

そのときにIBM iとオープン系リソースをつなぐのがAPIです。だからAPIはIBM iでも必須の技術になるのです。このストーリーをお客様と共有しないと、APIは単なる接続技術の話で終わってしまうと思えます。

柿澤 つまりIBM iは残っていくし、残していくべきなのですね。営々と築いてきたIBM iの価値はAPIによって活かすことができ、未来へとつながるというわけです。

藤井 お客様の社内にIBM iの要員とオープン系の要員がいたら、その両者の中間にAPIを置いたら、IBM iのモダナイゼーションやシステムの拡張は急速に進展すると思えます。身近なところで、APIは価値を発揮すると思います。

図表2 API活用イメージ ①
図表3 API活用イメージ ②

 

[i Magazine 2022 Winter(2022年1月)掲載]

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