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IBM i 継続利用のために、アプリケーション解析ツールの本質を理解しよう|前編◎IBM i用アプリケーション分析ツールの整理

text=阿野 幸裕 ジーアールソリューションズ

 

IBM iアプリケーションのブラックボックス化、属人化は昨今のDXやモダナイゼーションのブーム以前から課題にあがっており、その解決策としてドキュメント化のためのツールが開発され利用されてきた。ただし、ドキュメント化したものの最新化がなされない、ドキュメントが大量になるためシステム改変の影響調査に時間がかかるなどの問題が発生し、利用頻度も次第に下がり使われなくなるという新たな課題も生じていた。そしてその課題を解決する目的でアプリケーション解析ツールが開発されたが、市場ではドキュメント化との区別がついておらず、導入効果も理解されていない。本稿はアプリケーション解析ツールの本質を明らかにするとともに、IBM i継続利用におけるメリットをわかりやすく前後編の2部構成で解説するものである。

 

現在、多くの分野でデータ活用の手法やツールが利用されている。基幹システム上の構造データを情報系システムとして再活用するデータウェアハウスは、データマートやデータマイニング、ETL、OLAP、データドキュメント化などの手法やツールを生み出した。また最近では、非構造のビッグデータを格納するデータレイク、その整理のためのデータカタログなども一般的となり、多くの企業で活用されている。このデータにまつわる手法やツールの違いは広く認知されており、たとえばデータの可視化・分析では、データマイニング、OLAP、ダッシュボード、データドキュメント化などのツールが適材適所で利用されている。

アプリケーションの可視化・分析はどうか? 

データレイク(湖)に蓄積されたデータが整理されず、実体が掴みにくい状態を「データスワンプ」(沼)という。澄んだ水の湖のイメージに対して、汚れた水で何があるかわからない澱んだ状態を指す用語である。このことはデータを処理し加工・出力・格納するアプリケーションでも同様である。長年開発・改変を繰り返してきたアプリケーションはブラックボックス化していることが多く、そのカタログ情報はベテラン技術者の頭の中に断片的にしか残っておらず、将来的なシステム維持の課題となっている。

ドキュメント化ツールの誕生 

ブラックボックス化への対応策として市場に投入されたのが、「ドキュメント化ツール」である。「ブラックボックス化の原因はドキュメント化されていないから」「ドキュメント化が進まない(更新が途絶える)のはエンジニアの負荷だから」という考えに基づき、システムリソースからドキュメントを自動・半自動で作成するツールが開発された。これにより、プログラム、ファイル、フィールドの一覧やシステムフローなどの作成が簡便になった。データ活用ソリューションの中でたとえるなら、データドキュメント化・定型帳票化ツールが同じような位置づけになる。

だが、運用が進むにつれて、以下が課題として浮上するようになった。

①自動作成されたドキュメントは形式こそ異なるがプログラムソース内の情報と同一なので、結局「ソースを見たほうが早い」となる。
②ドキュメントにビジネスロジックの業務的な意味(業務仕様)などを加える際、エンジニアによる追記が必要になる。
③ドキュメントの量が膨大になるので、調査作業で検索を行い問題箇所を特定することにおいて解決策にならない。
④出力したドキュメントは、ほぼ使用されないか、使用頻度がきわめて低い。

そして多くのドキュメント化ツールはこの課題に対応するため、対話形式のドキュメント調査機能やドキュメントへの追記支援機能を追加し、「アプリケーション可視化ツール」として発展するようになった。

またそれと並行して、アプリケーション自体を対話形式で調査できるツールが登場し、発展してきた。

アプリケーション調査ツールの特徴 

IBM iは、システムカタログ情報が整理されているため、コマンドやSQLで参照・抽出できる特徴がある。データ活用でたとえるなら、RDBMSはテーブルの定義情報やメタ情報、テーブル以外の各種オブジェクトの情報をカタログから取り出せるが、IBM iはDBだけでなく、プログラムやその他のオブジェクトを含めたすべての情報をカタログから取り出せる。つまり複数のソースコードを追跡しなくてもプログラムの親子関係を特定できるといった、コマンドでさまざまな情報を引き出せるメリットがある。

しかしながらIBM iから抽出した情報はRDBMSのローデータ形式であるため、視認性に欠ける。そのためそれらを図式化し、操作をGUIで可能とする「アプリケーション調査ツール」が登場した。この種のツールは、アプリケーションの現時点の実態を効率よく調査するという、ドキュメント化ツールが苦手としていた課題を解決した。データ活用におけるOLAPツールのような位置づけである。

このアプリケーション調査ツールによって、ドキュメント化ツールよりもツールの使用頻度が上がったが、その一方でIBM iのカタログ情報では網羅できない情報ニーズがIBM iユーザーの間で生じた。そしてこのことは、毎日使えるほどの使用頻度に至らないという費用対効果の問題も顕在化させることとなった。

IBM iユーザーが求めたのは、DBフィールドやプログラム変数の置換・代入の関係性やビジネスルールの抽出など、あるいはオブジェクトの廃止による影響や、冗長性や品質など調査の効率化に必要な情報であり、オブジェクトとソースコードの双方を深く解析しないと抽出できない情報であった。

アプリケーション解析ツールの登場  

アプリケーションを深く解析でき、かつ毎日使えるツールには、データ活用と同様のデータレイク的蓄積や品質管理、クレンジング、データマート、多次元分析、統計分析、データマイニングなどに匹敵する機能が必要となる。そしてそれらを実装したツールとして、「アプリケーション解析ツール」が登場してきた。

下記が「アプリケーション解析ツール」の代表的な機能であり、前述の「ドキュメント化ツール」や「アプリケーション調査ツール」が実装する機能とは一線を画している。

①アプリ情報の蓄積:データレイク、データウェアハウスに相当
②アプリ品質の調査:データクオリティ、データクレンジングに相当
③アプリ使用状況・変更頻度、複雑度等の計測:統計分析に相当
④アプリ解析用途、目的などに応じたグルーピング:データマートに相当
⑤アプリの多角的な可視化:OLAPに相当
⑥アプリの変数レベルの遷移調査、ビジネスルール抽出:データマイニングに相当

さらに、これらの利用を簡便にするインタフェースや仕組みも、アプリケーション解析ツールが備える重要な機能である。

図表1 各ツールのポジショニング

ツールの解析機能や網羅性が向上すると、使用頻度と解析の自由度(柔軟性、可用性)は高まる傾向にあり、費用対効果も向上する。つまり、アプリケーション解析ツールのほうがドキュメント化ツールやアプリケーション調査ツールよりも費用対効果が高いと言うことができる。

以上、アプリケーション解析ツールの誕生までの経緯と位置づけをお分かりいただけただろうか。後編では、アプリケーション解析ツールのBI的な活用方法について解説する。

著者

阿野 幸裕 氏

ジーアールソリューションズ株式会社
モダナイゼーション事業
専任部長/X-Analysisスペシャリスト

IBM i継続利用のために、アプリケーション解析ツールの本質を理解しよう

前編◎IBM i用アプリケーション分析ツールの整理
後編◎アプリケーション解析ツールのBI的活用のすすめ

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