IBMは7月14日、Power11世代のエントリーサーバー「IBM Power S1112」を発表した。2024年に投入したPower10世代のエントリーモデル「Power S1012」の後継に位置付けられる製品で、IBM i、AIX、Linux向けの1ソケットサーバーとして、小規模システムやエッジコンピューティング市場を引き続きターゲットとする。提供開始は7月24日。
Power S1012は、小規模IBM iユーザー向けに筐体を従来比約4分の1まで小型化し、P05モデルやIBM i専用1コアモデルを投入したことで注目を集めた。Power S1112も同様に、高さ2U・ハーフラック幅のコンパクトな筐体を採用し、ラックモデルとタワーモデルを用意するなど、設置性の高さを継承している。

一方で、S1112ではプロセッサがPower10からPower11へ刷新され、4コアまたは10コアのeSCMプロセッサを搭載する。Power11では、新しいDME(Dense Math Engine)とCPU内蔵のMMA(Matrix Math Accelerator)を採用し、AI推論や機械学習、行列演算などの処理性能を大幅に強化した。S1012でもMMAは搭載されていたが、S1112ではAIを企業システムで活用することを前提に設計されており、Power11世代の特徴の1つとなっている。
メモリ・サブシステムも進化した。S1012はDDR4 DIMMを採用し、P05モデルでは最大64GB、P10モデルでも最大256GBという構成だった。これに対しS1112はDDR5 DDIMMを採用し、最大512GBまで搭載可能となった。さらにOpen Memory Interface(OMI)の採用により帯域幅も向上し、IBMは前世代比でコア当たり最大2.5倍の性能向上をうたっている。
IBM iユーザーにとって注目すべき点は、両機種ともエントリー向けのP05(機械別グループ)に対応していることだ。ただしS1112では、IBM iは最大4コア・64GBメモリまでという位置付けを維持しながら、追加したコアやメモリをLinuxやAIX、VIOSへ割り当てられるため、IBM iとオープン系ワークロードを1台に集約しやすくなった。
仮想化機能も大きな違いである。S1012では、Live Partition Mobility(LPM)やActive Memory Mirroring(AMM)などの高度なPowerVM機能は利用できなかった。一方、S1112ではPowerVM Enterprise Editionを標準搭載し、LPMやVirtual I/O Server(VIOS)、さらにAIX向けのActive Memory Expansion(AME)を利用できる。エントリー機でありながら、上位機種に近い仮想化環境を構築できる点は大きな進化と言える。
可用性・セキュリティもPower11世代で強化された。S1112は、量子コンピューター時代を見据えた耐量子暗号(Quantum-safe Encryption)や、Power Systemsで実績のあるRAS(Reliability、Availability、Serviceability)機能、自己修復アーキテクチャを備える。さらにIBM i環境向けにはCapacity Backup(CBU)をサポートし、高可用性(HA)や災害対策(DR)環境でライセンスを効率的に利用できる仕組みも継承している。
ストレージ容量も拡張され、S1012の最大6.4TBからS1112では最大12.8TBへ倍増した。PCI Express Gen4スロット4基、800W Titanium認証電源による冗長構成など、エントリークラスながら企業利用を意識した構成となっている。
Power S1012は「小規模IBM iシステムへの最適化」を前面に打ち出した製品だったのに対し、Power S1112はそのコンセプトを継承しつつ、AI、仮想化、メモリ、ストレージ、セキュリティを大幅に強化したモデルといえる。P05ソフトウェア・ティアによる導入しやすさを維持しながら、IBM iに加えてLinuxやAIXとの混在環境やAI活用も視野に入れたことで、Power10世代からのアップグレードだけでなく、新規導入を検討するユーザーにとっても有力な選択肢となりそうだ。
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