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プロジェクトdX|デジタルトランスフォーメーション実現には、人材育成変革が必然(田中良治)

第9回で「DX人材になることは自身の意識改革? Behavior Transformationかも?」と題して、シェアさせていただきました。それに通じるところもありますが、人材育成も重要であるというのが、今回のテーマです。

会社が将来に向けてどこに向かうのか、どうなりたいのか、その将来像には大きな変革、変化が求められています。ライフスタイルや価値観の変化から、企業のあり方には変革、変化が迫られていることは間違いありません。求められている変革の実現に必要とされるのが人間力である以上、どのような人材を採用、育成するかは、その成否の重要なキーファクターとなります。

変革実現を目指すと意思表示する経営者は確実に多くなっています。そんな経営者の中でも、変革後の将来像が具体的に描けていないで、掛け声だけのケースでは、採用と育成計画は変わらないままという企業が多いと感じます。

今までと同じような人材を採用し、これまでどおりの育成計画では、今までと変わらないのではないかというのは容易に想像がつくことです。ここでも今を疑う、これまでを疑うことは重要なのです。

日本では、学歴社会がまだ色濃く残り、正解を求める試験での評価で進学先の選択肢が決まり、そして進学した学校による人材の評価が少なからず残っています。

つまり、正解を出すことが求められ、それが評価につながるため、そこに重点、軸足をおく中で育った人材が多いというのが現実です。これまでの人材だけでなく、これからの人材にも共通していることです。

高度経済成長期には、そんな教育環境下で育った人材には、考えるより動ける人材が重宝されたような気がします。体育会出身学生のキャラクターが企業で重宝された理由も、このあたりにあるのかもしれません。

論理的な思考で今を疑わない、これまでを疑わない文化が知らず知らずのうちに正になってしまった理由が、ここにもあると考えます。

しかしながら、今はもう「考えるよりも動け」という時代ではありません。自分で考えて行動できないといけません。
体育会出身学生を例にとると、打ち込んだスポーツで学んだことを、いかに転換していけるかどうかです。正解を出すだけなく、自分で課題を見つける力が必要になってきます。それが、今、企業に求められる人材像なのです。

企業のデジタルトランスフォーメーションは、採用する人材と採用してからの人材の研修や育成計画の変革なしにはありえないのです。
 
「考えるよりも動け」を完全に否定するものではありません。似たようなことを示す四字熟語で、「巧遅拙速」(こうちせっそく)というものがあります。“巧みにしようとしてぐずぐずするよりは、拙くともすばやく決行するほうがよい”ということを示すもので、これには一理あります。

また、すばやく動いてまずトライし、結果的にうまくいかなくても、失敗を次に活かせばいいという考え方も正です。

こう言うとケースバイケースと取られかねないのですが、そういうことを伝えたいのではありません。盲目的になってはならない、論理的思考で今を疑う、これまでを疑う、そして課題を見つけるために考えることは、いずれのケースにおいても重要であることは間違いないのです。

そして、「何のために働くのか、何を社会に還元できる企業に自分が身を置いているのかを認識し、自身が創出する成果の価値を考えて、判断し、自ら行動できる」人材を採用し、育成することに、人材育成を変革すべきと考えるのです。

著者
田中 良治 氏

株式会社ソルパック
取締役CDTO
(沖縄経済同友会、一般社団法人日本CTO協会、一般社団法人プロジェクトマネジメント学会所属)