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プロジェクトdX|「当たり前」を当たり前と思わないーーそれが変革を生みだすスタート(田中良治)

私たちは当たり前じゃない世界を見過ごしてしまうことがあります。そんな私たちが所属する企業の多くは、これまでの常識を覆すような変革の必要性に迫られています。それは、企業がこれまで維持してきたこと、これまで優先してきたことを変革する必要性とも言い換えることができます。

これまでの「当たり前」が、これからの当たり前になるとは限りません。多くの日本企業は不透明な明日をこれまでどおりにすることで結果的に“横並び”となり、そして今や世界に後れを取る状況となっています。つまり、日本のこれまでの「当たり前」は、これからの世界の当たり前になるとは限らない、むしろ当り前ではない状況がすぐそこにまで来ているのです。

当たり前じゃない世界を知ることは、現在のリスクを増大化するのではなく、将来のリスクを最小化することに繋がると思えます。むしろ将来への対応、将来のリスクを考えることは、当たり前じゃない世界を知ることからこそ始まるのではないか、と思うことから、今回のコラムを執筆しました。

東京ヴェルディの地域貢献事業

サッカーJリーグの創設よりも前にクラブチームとして立ち上がり、Jリーグの創成期に圧倒的な強さを誇った東京ヴェルディには、当たり前じゃない世界があることを子どもたちに教える地域共創事業があります。

それは、障害のある人も楽しめるスポーツがあることを子供たちが知ることは、いろいろな人が共生する社会をつくっていくときの1つの手がかりになるはずというクラブの想いと、スポーツを活用して共生社会を実現したいとする地方公共団体の考えが一致してスタートした取り組みです。

クラブが子どもたちに教えるのはサッカーのルールや技術ではなく、「当たり前じゃない世界もあるんだよ」ということだそうです。たとえば、小学生に障害者目線でスポーツを体験してもらうこと。そうした体験は「相手のことを理解する」気づきを得る貴重な経験になると言います。

選手やスタッフが地域と交流し、住民と一緒になって地域の課題解決に力を入れている素晴らしい取り組みだと思います。

東京ヴェルディのコーチングスローガン「GREEN」
東京ヴェルディのコーチングスローガン「GREEN」

新規事業は地域貢献に軸足を

お客様体験、生活者体験の高度化は、人と接点を持つサービスの今後のあり方として、企業が貢献すべき選択肢の1つであると理解しています。

しかしながら企業は「相手のことを理解する」よりも儲けること(自社の経営安定)を優先し、自社ファーストを貫いてきました。そしてそういう企業が未だに少なくないため、世界から最も変革が遅れている国の1つと見なされ、「失われた30年」もしくは「失った30年」と言われる低迷を続けているのが、今の日本経済、日本社会の現状です。

筆者が属するソルパックでは、新規事業の発信拠点を沖縄とし、地域貢献に軸足を置くことから活動をスタートさせました。そして地域の課題を知ること、生活者を理解することから始めています。

沖縄県は、全国の都道府県のなかでも「子どもの相対的貧困率」がきわめて高い県とされています。2022年度の調査では子どもの約3.3人に1人が相対的貧困で、全国平均の2.2倍にも及んでいます。そして沖縄の子どもたちの間では、家庭の経済的事情を主な背景としたさまざまな格差が生じているのです。

ソルパックでは2022年度末に、沖縄での新規事業の実績をもとに、公益財団法人みらいファンド沖縄が支援する「NPO法人フードバンクセカンドハーベスト沖縄(フードバンク2h沖縄)」への寄付を行いました(*1)。また、沖縄県内で誰でもサッカーができる環境づくりに取り組む「ボランティアサッカースクール」の活動に共感し、ユニフォームを寄贈しました(*2)。

ボランティア サッカースクール
ボランティア サッカースクール
ボランティア サッカースクールを主宰する荒川幸希 氏(琉球新報 2023.7.2掲載)
ボランティア サッカースクールを主宰する荒川幸希 氏(琉球新報 2023.7.2掲載)

 

当社ではこれからも、当り前じゃない世界へ目を向け、地域貢献共創として、社会課題の解決に資する活動に献身的に取り組んでいきたいと思っています。当たり前じゃない世界があることを知り、生活者の体験を今までよりもよくすることへの貢献を、これからも継続していくつもりです。

そうした活動で得られる利益は、会社の売上に直結しません。しかし私たちの活動を知った多くの人たちから賛同や貢献を得られれば、それが社会の利益につながっていきます。また新しい体験を得た子どもたちは、私たちの未来に何かの利益をもたらす存在になっていくと思えます。

そんな利益を評価するKPIは、今の経営指標にはありません。でも、そうした当たり前こそ疑っていい時期に来ています。「当たり前」を当たり前と思わないことは、さまざまな変革を生みだすスタートだと思うのです。

*1 フードバンク2h沖縄
https://www.2h-okinawa.org/about.php

*2 ボランティアサッカースクール
https://www.koki41.com

著者
田中 良治 氏

株式会社ソルパック
取締役CDTO
(沖縄経済同友会、一般社団法人日本CTO協会、一般社団法人プロジェクトマネジメント学会所属)

プロジェクトdX|実現を支えるプロフェッショナルの流儀は人間力  ◎コラム掲載

第1回 今こそ変革の武器に! 日本企業の持つ強みは元サッカー日本代表監督イビチャ・オシム氏も評する“現場力”

第2回 変革実現に求められる企業カルチャー(前編) ~対極の発想をする

第3回 変革実現に求められる企業カルチャー(後編)~経営層の意識改革

第4回 DXプロジェクトがこれまでのプロジェクトと異なる理由

第5回 迫られる企業経営変化への対応と変革に必要とされる3つのエンジン

第6回 これから企業が取り組むべく3つのトランスフォーメーション・ロードマップ 

第7回 デジタル先進企業へ進化するための3つのポイント

第8回 デジタルトランスフォーメーションで高度化する事業活動

第9回 DX人材になることは自身の意識改革? Behavior Transformationかも?

第10回 DXと千羽鶴 変わる勇気と変わらない勇気

第11回 デジタルトランスフォーメーション実現には、人材育成変革が必然

第12回 デジタルトランスフォーメーションへの挑戦 ~ソルパックの取り組み、その先の真の変革

第13回 2022 FIFA ワールドカップに見る「デジタルトランスフォーメーションがもたらした勇気」

第14回 Jリーグ30年に学ぶ、リスキリング(学び直し)の必要性

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