前項[02]で提示した「開発環境構築ロードマップ」のステップ1は、Visual Studio Code(以下、VS Code)の導入である。
VS Codeは、Microsoftが開発・提供する、無料で利用できる高機能なソースコードエディタである。現在、世界中の多くのソフトウェア開発者にとって、言語やプラットフォームを問わず、開発の中心的ツールとなっている。
本稿では、長年SEUに慣れ親しんできたRPG開発者が、今なぜVS Codeを学ぶべきなのか、その具体的なメリットと、開発スタイルにもたらす変革について解説する。
VS Codeは単なる
「高機能なメモ帳」ではない
VS Codeを単に「高機能で高速なメモ帳」として利用している人もいるかもしれない。フォルダの階層構造を表示しつつ、自分が今編集しているファイルがどれなのかを視覚的に認識しながら、複数のメモをタブで分割して処理できる(図表1)。

もちろんその機能も有用な使い方だが、VS Codeの真価は、豊富な拡張性にある。VS Codeは、それ自体がプラットフォームとして機能し、世界中の開発者が作成した無数の拡張機能(Extensions)を組み込むことで、特定の言語や用途に特化した自分専用の強力な統合開発環境(IDE)へと育てることができる。
生成AI時代の開発ツールも、その多くがVS Codeの拡張機能として提供されていることを考えると、VS Codeに習熟することが、AIの恩恵を十分に受けるための前提条件と言えるだろう。
RPG 開発者にとっての
具体的なメリット
AIによる開発がこれからは必須となる時点で、SEU/PDMを今後も使い続けていくメリットはほぼないと言ってよい。1日もはやくVS Codeベースの開発環境に移行してほしい。
VS Codeへ移行することで、RPG 開発者は具体的に以下のようなメリットを享受できる。
効率的な画面レイアウト
VS Codeは画面を自由に分割し、複数のソースファイルやドキュメントを同時に表示・編集できる。RPGのソースを参照しながら、PF/LF/DSPFなどのソース、仕様書を並べて確認するといった作業が、ウインドウを切り替えることなくスムーズに行える。
AIを含む強力な拡張機能エコシステム
IBM i開発では、VS Codeの能力を最大限に引き出す、以下の拡張機能を利用できる。
Code for IBM i
・IBM i開発者コミュニティによって開発されている必須の拡張機能
・VS CodeからIBM iに接続し、ソースメンバーの編集、コンパイル、エラーリストの確認、デバッグまで、開発に必要なほぼすべての作業を実施可能
・ローカルにソースコードを配置し、IFSにプッシュしてコンパイルすることも可能
Git Hub Copilot/Gemini
Code Assist
・AIがリアルタイムでコードを提案してくれる、次世代の開発スタイルをVS Code上で実現
GitGraph
・ブランチのグラフを視覚的に表示(図表2)

GitLens
・ソースコードの各行が、いつ、誰によって、なぜ変更されたのかを瞬時に可視化
統合されたターミナル
VS Codeの画面内から、直接IBM iのCLコマンドを実行したり、Gitコマンドを操作できるターミナルを呼び出せる。エディタとコマンドラインの間をシームレスに行き来できるため、思考が中断されることなく、開発フローに集中できる。
ソースライブラリーやメンバーといったSEUの概念に慣れた開発者にとって、VS Codeへの移行は確かにハードルが高い。しかし、その学習コストを乗り越えた先には、AIと協調し、これまでにない生産性を実現する新しい開発の世界が広がっている。
著者|
小川 誠 氏
ティアンドトラスト株式会社
代表取締役社長 CIO CTO
1989年、エス・イー・ラボ入社。その後、1993年にティアンドトラストに入社。システム/38 から IBM i まで、さまざまな開発プロジェクトに参加。またAS/400 、IBM i の機能拡張に伴い、他プラットフォームとの連携機能開発も手掛ける。IBM i 関連の多彩な教育コンテンツの作成や研修、セミナーなども担当。2021年6月から現職。
新・IBM i入門ガイド [コード生成編]
<基本用語>
01 生成AI&IBM i市場動向
02 生成AI
03 大規模言語モデルとマルチモーダルモデル
04 プロンプトとコンテキスト
05 AIエージェント
06 ハルシネ―ションとセキュリティ
07 ファインチューニングとRAG
08 APIとMCP
<基本ツール>
01 コード生成AIの思考プロセスと主要ツール
02 IBM i開発環境構築ロードマップ
03 Visual Studio Code
04 Code for IBM i
05 Git
06 Markdown
<開発ツール>
01 AIファースト開発環境
02 IBM Bob
03 対話型・CLI型AIツールの戦略的活用術
04 学びを止めないための次の一歩 リンク集
[i Magazine 2026 Spring掲載]







